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 かかりつけ医通信    第71号   2004年10月23日発行
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    健康・医療のお役立ち情報・・・医療の現場から
 私達は、医療の現場で働く臨床医です。実際の診療やネット上から
 得た健康と医療の役に立つ情報を、市民の皆さんにお届けします。
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▼目次▼
1)持続可能な制度設計のために
2)医療の財源について
3)診療報酬制度について
4)混合診療の導入に反対しましょう
5)ブラックアウトキャンペーンのお誘い
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1)持続可能な制度設計のために

 現在日本の経済は破綻しております。再建をすべき現状です。高齢化社会も
急である。医療費は押さえないといけません。ありとあらゆる医療費抑制策は
各国で実施されています。たとえば混合診療を導入しているアメリカやフラン
ス。あるいは低医療費政策を行っているイギリス、カナダでは医療費削減に失
敗しております。日本だけが比較的押さえ込まれている。現在の枠組を残すか
ぎりは今後も完ぺきにコントロールされると思われます。

なぜ日本の医療費は安いのか
(1)国民皆保険制度
(2)診療報酬の国家統制制度
(3)混合診療の禁止
以上により医療費を、政府が自由にコントロールできるシステムだからである
と思われます。

なぜ日本の医療費は安いのか
http://www.orth.or.jp/seisaku/sendai2004/content/yasui.html

セーフテイネットを構築しましょう
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/safetynet.html
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2)医療の財源
 医療に投資をしなければ医療の質と安全は確保できない。GDP比でアメリカ
並みとは言わないが,せめてドイツ並みに増やすべきである。財源は国民負担
をいたずらに増やすことでなく,政府(行政)の 経費や人件費や補助金を節約
することと公共事業への投資を減らし,社会保障へ公的 財源を振り向けること
である。先進国の中で公共事業費が社会保障費より多いのは日本だけである。銀
行につぎ込んだ公的資金は約40兆円にも達しているのだ。足りないなら,消費税
をアップするか,タバコ税を新設することも考えられる。

巻頭言 /H16.9月社会保障改革と医療費抑制策について
会長 鮫島  健
http://www.nisseikyo.or.jp/home/kanto/kanto200409.htm

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3)診療報酬制度について

1)医療の原価を出しましょう
 医療の効率化のためには、医療の無駄を除く必要があるわけですが、そのた
めには、点数制度を現在の不充分な出来高と、包括化の最悪の組合わせではな
く、急性期、慢性期を問わず、診療点数をすべて、真の出来高制にして、かつ
診療行為の単価は、できるだけ医療原価を反映した点数にする必要があると思
います。また、診療報酬が、医療にかかるすべての費用を補填するという考え
方にこだわらず、施設や機器設備等の資本関連コストに対して、補助金や税金
といった、他の政策手段を積極的に活用することによって、病院機能の一層の
充実を図るべきであると思います。また健保や国保等の、弱小の保険者の財政
基盤が危うい現在、制度間の不均衡の是正。保険者の統廃合や事務の合理化は、
必要であるとおもいます。厚労省も保険者の体質改善には乗り出しているよう
です。

診療報酬制度を真の出来高制にして医療の質の向上と、透明性を確保しましょう
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/dekidaka.html

出来高制は堅持すべきですが、より大切な事は医療の原価を正確に把握する事
かと思います。原価より支払いが高ければ過剰医療になり、支払いが少なけれ
ば過小医療となる。いずれにしても健全な医療とはならない。原価を反映しな
い、包括化の跋扈は医療をゆがめる。内部矛盾が拡大する。それは特に急性期
医療と高齢医療に顕著にでるでしょう。205点という包括化をして、おかし
いというなら、当然DRG/PPSもおかしいことになるのは理の当然。同じ問題が出
る。205点ルールは包括化の良い実験である。

医療費の支払い制度について
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/siharai.html

特権か市民権か
http://www.orth.or.jp/seisaku/sapporo2003/index.html

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4)混合診療の導入に反対しましょう
 誰でも、いつでも、どこでも安心して平等に医療を受けられる国民皆保険
制度を守りましょう

○混合診療の導入について

 小泉首相は10月12日の第161臨時国会の所信表明演説において、「混
合診療」の解禁を推進する旨を明確にしました。

○混合診療の導入目的
1)持続可能な制度作りのための国の医療費削減
2)患者サービスの向上
 給付制限と利用者側の多様なニーズに応えるという理由で,混合診療の導
入が主張されているが,その狙いは,公的保険を補完するものとしての民間
保険を普及させることにある。外資系の保険会社の「入院保険」の分野への
進出はすでに顕著なものがある。

 混合診療が導入されれば、国の支出は減りますが、患者さんの自己負担が大
幅に増えます。高度先進医療などは、早急に保険収載されるべきであり、これ
を混合診療化すれば永久に保険収載されない可能性が高いと思われます。いわ
ば受けられる医療の範囲がお金の有無によって決まるのです。病気になっても
健康保険で見ていただけなくなります。自己責任となる。自分の身は自分で守
りなさい。これでは国民皆保険制度が成立した以前の状態に戻ってしまいます。
「混合診療」の解禁は国民皆保険制度を形骸化するもので、到底看過すること
はできません。
 「誰でも、いつでも、どこでも安心して平等に医療を受けられる国民皆保険
制度を守りましょう」
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○国民の7割が平等な給付に賛成

日医総研の行った調査では、国民の7割は国民皆同じレベルの医療を受けら
れるのが良いとはなっている。追加料金を払えば保険で給付している以上の
サービスを受けたいと言う方は一般国民では2割。患者では1割である。大都
市部居住者でも7割が前者。高額所得者でも6割が前者ですね。。

病院側が患者の法定外負担増により、医業収益を増やすことは困難である。
一部のブランド病院を除いてそのような行動はむしろ医療不信を強める可能
性がある
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混合診療って何?(日本医師会)
http://www.med.or.jp/nichikara/kongouqa/index.html

混合診療に関する論点
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/kongou.html

第6回 構造改革特区・官製市場改革WG 議事概要
http://www8.cao.go.jp/kisei/giji/03/wg/tokku/04/gaiyo.pdf

医療の基本的性質
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/sizyougenri.html
情報の非対称はなくならない

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○混合診療解禁の影響
 株式会社の参入、混合診療の解禁など、市場原理の導入を行えば、自由診療
となり、診療費の、政府のコントロールが効かなくなるので、結局、国の負担
は減っても、総医療費は増大し、ツケは国民(特に、収入が少ない層)にまわ
ることになります。

 ホテルコストは健康の範囲から外れるから、健康保険外です。「混合診療」
の規制緩和、特定療養費の安易な拡大は、自費診療部分に民間保険が適用され
るため、費用抑制効果はなく、かつ公私合わせた医療費の上昇をもたらします。
同時に、診療の質の低下を招く可能性も高い。また、医療費抑制が目的である
からには、現在の、保険診療の範囲縮小につながると思われます。貧しい方は
診療を受けられなくなる。安易に、自己負担増に結びつくような政策をとれば、
医療はセーフテイネットではなくなる。避けるべきであると思います。
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●保険会社の介入

 保険診療点数削減+自己負担増で行うことになる。高額な治療材料の場合は、
任意保険でまかなうことになります。市場性が出てくるなら、保険会社は様々
なサービス展開をするでしょう。高額医療費でカバーできてくれば、このよう
な瑣末なものも保険でカバーできる。それが保険会社の商品サービス。

●保険会社の介入では以下のようなことが予想されます。
1)保険料が上昇し、患者さんの負担が増大する。
 保険会社の契約内容は複雑怪奇:誰も理解できない
 それこそ情報の非対称の最たるものであろう。

2)保険会社の中立性が担保されない:日本版患者残酷物語
 患者の保護(適正な保険金支払)が大幅に後退する。
・現在は保険金の支払をめぐる保険者と患者の利害が本質的に相反する中
 で、政府が皆保険制度を背景に監督し、適正な保険金支払を確保している。
・最近、アメリカでは、保険会社の保険金支払の不公正さが社会問題化した
 患者権利法案が提出された。様々な抑制策を作っても防止しきれていない

 保険金支払の適正化を担保するためには、公的制度であることが必要で民営
 化は、患者への保険金支払に支障を生ずることにつながる。
・現在でも、交通事故をめぐる訴訟のほとんどは、任意保険関係である。
 任意保険では第3者機関=自算会や様々な抑制の枠組を作っているがあまり
 巧く機能していない。エンドユーザの不満が多い。保険金支払の公平性が崩
 れる。払いしぶりが起こる。患者と保険会社のトラブルが急増する。

3)無保険者が増大する。
 民間保険は高額である。

4)保険会社破綻時に、患者(保険契約者)の保護に支障が生じる。
 巨大な運用益がでる場合もある。原則保険料率は自由である。

5)医療機関に対して
・保険料負担増による受診抑制が起こる。より重症になって受診するから
 患者さんの健康が悪化する。
・保険会社の値切り交渉が起こる。不払いもある。訴訟も増加する。

1)民間保険導入論批判
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/minkan.html

2)かかりつけ医通信 第7号
http://www.docbj.com/kkr/kako/007.htm

3)保険者直接契約の問題点
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/hokensyatyoku.html
●自己負担増;価格弾力性が高い軽医療は受診抑制が起こる。
自己負担が増えれば受診抑制がきます。価格弾力性の高い疾患はより激しい
よって金銭負担が増えれば軽医療は減る。特に歯科に激しい。
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●混合診療容認の影響予測
特定療養費制度を拡大しても医療費、病院収益の大幅増加はない。公私の医療
費総額はそれほど拡大しない。一部のブランド病院を除けば病院の医業収益の
大幅増加も望めない。
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先進国ではアメリカよりも高い。1998年時点で21.7%であり、アメリカの
16.8%を上回っている。現在の患者負担を増やし、それによって医療費総枠を
増やす余地はほとんどない。アメリカは保険料は高いが自己負担がないこと
も多い。

2)介護保険の混合介護は進んでいない
介護保険では混合診療は認められている。混合介護利用者=支給限度額を超え
る利用者は1.5%とすすんでいない。現時点では公私2階建てではなくて、公
的制度内での消費でしかない。

3)室料差額収入は漸減
 実際の室料差額などは収入増に結びついていない。

           1991年   2001年     
差額病床のベット数  10%   13.9%
医業収益に占める割合 1.5%        1.1%

1)不況のためにぜいたく財をひかえる
2)高額の差額料を徴収しても患者を吸引で切るのは都市部のブランド病院に
限られる。特に歯科ははおさえられたままです。軽医療は価格弾力性が高い
から単に受診抑制がくるだけ。

○民の効率の効果:米国では医療費は高騰している。
http://uslabormarket.web.infoseek.co.jp/topics/03/topics03061.htm
歯科や眼科の医療費はそれほど高くなっていない。同じ医療でも、一般の医療
行為と歯科や眼科の間では、大きな格差があるようである。

 結局「経済財政諮問会議」の民間委員は,医療に関する需要の増大を見込ん
だうえで,それを大きなビジネスチャンスととらえて経済活性化の 起爆剤にし
ようと考えている。すなわち,医業への株式会社の参入を認め,競争原理を働
かせることによって,安い費用で医療が提供されるうえに,医療の質やサービ
スが向上するという理屈である。

 この市場原理主義の試みはアメリカで失敗していることは明らかである。市
場原理主義では医療の低コスト化は成功しなかった。質の向上は機能しなかっ
た。世界一医療費の高い国になってしまった。彼らの本音は医療という30兆円
規模の市場に参入して,これをさらに100兆円規模の大市場へ拡大して利益を追
求しようとしている。
ジェトロ-対日アクセス実態調査-医療・福祉
http://www.jetro.go.jp/ip/j/Access/iryofukushi.html

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5)ブラックアウトキャンペーンへのお誘い

 混合診療導入に反対しましょう
 混合診療導入反対(保険適応疾患の永続的保険はずし)
 特定療養費制度「無原則拡大」反対

●ブラックアウトキャンペーン方法

 この主旨にご賛同頂ける方は、以下のいずれかの方法で、反対の意志表示を
して下さい。
1)ご自分のHPの背景をブラックにする。一部でも全部でもかまいません。
 例 http://www.orth.or.jp/

2)以下の混合診療反対賛同者リストに各位のご署名とご意見を書いてくださ

 混合診療反対賛同者リスト
 http://www.orth.or.jp/seisaku/

3)ご自分のHPに反対キャンペーンロゴをはる

 ブラックアウトキャンペーン用ロゴ
 http://www.orth.or.jp/seisaku/kongoulogo.jpg
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●日本医師会の主張

日本医師会の運動も行われております。日本医師会へもご意見をよろしく
お願いいたします。

◇国民の皆さまへ・国民医療推進協議会参加団体の皆さまへ
http://www.med.or.jp/nichikara/syomei/index.html
 この「国民医療推進協議会」により、「混合診療」の解禁に強く反対しして
いくために署名運動を行っています。国民の皆様には、この運動へのご理解と
署名活動へのご支援を賜りたくお願い申し上げます。

◇会員の皆さまへ(署名運動へのご協力をお願いいたします)
http://www.med.or.jp/japanese/members/syomei/index.html

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●【WEB】 http://www.docbj.com/kkr/
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様からのご意見も参考にして、メルマガ「かかりつけ医通信」の紙面づくりに
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おりますので、事前の承諾なしにメルマガに掲載させていただく場合がござい
ます事をご了解下さい。匿名などのご希望や、掲載を望まれない場合には、そ
の旨御明記願います。
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【発行】「かかりつけ医通信」発行委員会
 当委員会は、趣旨に賛同した医師による、自発的な会です。
 他の既存の団体や会社に所属しているものではありません。
【編集】
(委員長)長島公之:長島整形外科(栃木県) 整形外科医
      http://www.docbj.com/
(委 員)五十音順
 安藤潔:荒川医院(東京都) 内科医
  http://www2u.biglobe.ne.jp/~andoh/
 外山 学:益田診療所(大阪府) 内科医
  http://www.toyamas.com/masuda/
 本田忠:本田整形外科クリニック(青森県) 整形外科医
  http://www.orth.or.jp/
 牧瀬洋一:牧瀬内科クリニック(鹿児島県) 内科医
  http://intmed.exblog.jp/
 吉岡春紀:玖珂中央病院(山口県) 内科医
  http://www.urban.ne.jp/home/haruki3/index.html
 吉村研:吉村内科(和歌山県) 内科医
  http://www.nnc.or.jp/~ken
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