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 かかりつけ医通信    第73号   2004年12月29日発行
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    健康・医療のお役立ち情報・・・医療の現場から
 私達は、医療の現場で働く臨床医です。実際の診療やネット上から
 得た健康と医療の役に立つ情報を、市民の皆さんにお届けします。
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今年も残すところあとわずかになりました。
医療制度も、混合診療の全面解禁は阻止できましたが、これからも厳しい
時代に突入してゆくものと思われます。
かかりつけ医通信も、月1回の発行を目指しており、何とか年内に今月号
を発行できました。
来年もよろしくお願いします。
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▼目次▼
1) 原因不明の筋肉痛をきたす疾患
  a.線維筋痛症
  b.リウマチ性多発筋痛症

2) 我々は介護保険の予防給付にパワーリハビリを導入することに反対
  します。
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1) 原因不明の筋肉痛をきたす疾患
 a.線維筋痛症について

 身体の広範囲に強い痛みを起こす原因不明の病気があります。
 線維筋痛症という耳慣れない病名ですし、強い痛みを訴えるにもかか
わらずこの病気の本質は、膠原病?・リウマチ?・整形外科疾患?いずれ
も違い、むしろ心身症としてとらえられています。
 一般の方はもちろん、医師がこの病気を知らないことも多く、やっと厚
労省の研究班が立ち上がったばかりですが、これからは、この病気の原因
や治療法なども少しずつ明らかにされて行くと思います。
 社会や周囲の人にも理解されにくい疾患です。どんなに検査をしても
どこも悪くないのに「痛い、痛い」といっていると思われ、「怠け病や
詐病」と思われがちで、ますます精神的に落ち込んでゆきます。
社会的な認識と理解が必要な疾患でもあります。
 こんな原因不明の筋肉痛が最近注目されつつあります。

 今回は「線維筋痛症」と、もうひとつ同じような症状を示す「リウマ
チ性多発筋痛症」という病気について説明したいと思います。
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○ 線維筋痛症
 「線維筋痛症」は、原因不明の全身的慢性疼痛です。

○ 特徴・症状
 この疾患は欧米ではよくある病気と考えられていますが、本邦ではま
だ詳しい統計はありません。米国では有病率は、女性で3.5%、男性は
0.5%、人口の2%程度といわれております。中年の40〜50才代の女性
に多く、男女差があると言われています。しかし、正しい診断がされず
に治療を受けている方も多いかも知れません。

 症状は、首から肩・上肢の痛みやしびれ、腰背部の疼痛やこわばり感、
臀部から太ももの痛みと張り感、膝から下腿の痛みやしびれ、眼の奥の
痛み、口腔の痛み、頭痛などの様々な疼痛症状があります。痛みの性質
は「ガラスの破片が体内を動き回るような」「腕がもぎ取られるような」
痛みが続くというひどい痛みの訴えもあります。その他、こわばり感、
倦怠感、疲労感、睡眠障害、抑うつ、頭痛、過敏性腸炎、微熱、ドライ
アイなどが伴う事もあります。
このような症状になぜ「線維筋痛症:fibromyalgia」という病名がつい
たのか不明です。

○ 検査
 検査について血液検査やレントゲン・CT検査・MRI検査など、この病
気に特徴的な所見はありません。

○ 診断
 全身の広範囲の疼痛の既往歴のほか、特徴的な指圧点が挙げられてい
ます。
 1990年に発表されたアメリカリウマチ学会の分類基準(診断のための
18ケ所の指圧点が決められ、そのうち11ケ所以上に指圧による疼痛を感
じると陽性と判定されます)を参考に診断されます。
 しかし、膠原病あるいはリウマチと症状が似ている部分もあり、慢性
疲労症候群・膠原病・リウマチ等と合併して発症することもあるようで
す。特に慢性疲労症候群とは原因的にも関連のある状態と考えられてい
ます。

○ 治療について
 まず、抗炎症剤(痛み止め)を試みますが、効果がみられない場合が
多いようです。精神安定剤あるいは抗うつ剤(SSRI、 SNRI、三環系の抗
うつ剤など)を少量投与し、改善することもあります。ただ、だれにで
も効果がみられる薬はなく、効果がない場合はいろいろな薬を数週間か
ら数カ月ごとに試してみることになります。
心身症として治療を行うこともありますが、現在では日本リウマチ学会
で一応この疾患がとりあげられており、リウマチ専門医に相談されるの
が一番よいと思います。

○ 予後について
 線維筋痛症は生命にかかわる病気ではなく、身体障害者になることも
ありません。数カ月から1〜2年で症状が改善される方が相当数います。
また、症状が続いている患者さんでも、発病から数年たちますと、疼痛
のレベルは同等もしくは増強していても、生活には大きな支障がないと
いう患者さんが多いようです。
ただし、医療側の無理解で患者が病院を転々とし、症状が悪化していく
場合やこの疾患で悩んでいる人も多く、線維筋痛症患者救済のための
請願を自治体に提出している団体もあります。
 請願書では「種々のつらい症状を身近な家族や友人にさえ理解されに
くいことも大きな問題で、これは社会的問題といえます。通常の検査や
整形外科的所見で異常が出なければ、障害認定は極めて難しく、家事や
フルタイムの就労が難しくなっても、周囲からは理解されずに「怠け病」
と言われることもあります。それにより患者は身体的ストレスの上に精
神的ストレスを受けることとなり、それが悪循環となって病状が悪化す
る例が大変多く、これは患者には深刻な問題なのです。」と記載され救
済の要望がされています。

 このように線維筋痛症は、未だ一般の方にも、医師にも十分認識され
た病気ではなく、診断・治療にもまだ確立されたものはありませんが、
厚労省の研究班の検討も始まりましたので、その成果が期待されます。
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○関連サイト
線維筋痛症とは
http://fibro.jp/

謎の痛みで心身ともに苦しんでいませんか?』
http://www5d.biglobe.ne.jp/~Pain/

線維筋痛症友の会
http://www5d.biglobe.ne.jp/~Pain/what-fms.htm

線維筋痛症候群
http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/new_page_55.htm

最新医療情報
http://kk.kyodo.co.jp/iryo/news/1111senikin.html
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b.リウマチ性多発筋痛症

 リウマチ性多発筋痛症も、線維筋痛症と同じように、他に原因のない
肩、腰周囲の筋肉痛を起こす病気です。
 この病気がわが国の医学雑誌と教科書に現われるようになったのは今
からおよそ25年前といわれ、専門医が認識するようになってまだ日が浅
く、前述の線維筋痛症と同じく一般の医師のあいだにこの病気に対する
認識がさほど浸透していないのが現状です。
 人口の高齢化とともに増加する可能性がり、また知識がいま以上に深
まり、かつ普及すれば、病態のより複雑な例や非定型例が発見される機
会が多くなり、この病気に対する理解はいま一層高まるであろうと言わ
れています。

○ 特徴・症状
 一般に50歳以上,特に60歳以上の高齢女性に好発する原因不明の炎症
性疾患で,体幹近位筋の疼痛とこわばりを主徴としています。頸部,肩,
大腿などに2週間以上続く筋肉の疼痛とこわばりが特徴で,ある朝急に
痛み始めるといったエピソードなど突発的な発症が多くみられます。痛
みはふつう片側の肩の筋肉から痛み始め、数日または数週間のうちに両
肩の筋肉が痛むようになる。次いで痛みは他の近位の筋肉群におよび、
1ヵ月以上続くようです。
 痛みの性状は「朝、カミソリで筋肉が削り取られるように痛む」,「寝
返りを打つことも、起き上がることもできない」,「起き上がろうとする
と、両側の大腿の後部が絞るように痛む」,「排便・排尿が至難である」
などの強い訴えもあるようです。
発熱,全身倦怠感,体重減少などの全身症状や軽度の関節炎を伴うこと
もあります。
 この病気には15-20%に側頭動脈炎と呼ばれる血管障害の合併が多く、
両方のこめかみを通るこの動脈が腫れて痛んだり、頑固な頭痛や視力障
害に悩まされたといった症状が見られます。この側頭動脈炎とリウマチ
性多発筋痛症は密接に関連していると考えられています。
 
○ 診断
 特異的な検査所見には乏しいのですが,線維筋痛症と違って赤沈値の
亢進,血清CRP濃度高値などの炎症反応と,軽度の貧血および白血球数
と血小板数の増加がみられるようです。一方、顕著な筋症状にもかかわ
らず血清CPKなどの筋原性酵素は増加せず、リウマチ因子や膠原病など
で見られる抗核抗体は通常陰性です。

○ 病名 リウマチ性多発筋痛症:Polymyalgia Rheumatica(PMR)に
ついて
 この病気の正体がはっきりしないのに、病名に「リウマチ性」の名を
冠して良いのか、という疑問は専門家の間にもありますが、今日では、
少しあいまいなままに、リウマチ性多発筋痛症はリウマチ性疾患
rheumatic disease のなかに分類されています。
「リウマチ:rheumatism」とは,運動器(関節,筋肉,骨,靱帯,腱など)
の疼痛とこわばりを呈する疾患の総称」ですので、おそらく全身にわたる
痛みの多発に対して「リウマチ性」の名が付けられたのでしょう。

リウマチ性多発筋痛症(PMR)の診断基準は下記のような基準もあります
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 1. 両側の肩に痛みとこわばりがある。
 2. 発病から2週間以内に症状が完成する。
 3. 朝のこわばり(頚部、肩甲帯、腰帯)が1時間以上続く。
 4. 赤沈が40・/時以上に促進する。
 5. 65歳以上に発病する。
 6. うつ状態ないしは体重減少がある。
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 PMRを疑う基準:
 ・.上述の項目のうち、3項目を充たす場合.
 ・.上述の項目のうち1項目以上を充たし、また臨床的、
  病理組織学的に側頭動脈に異常が認められる場合.

○ 治療
 線維筋痛症では特別な治療法がありませんでしたが、リウマチ性多発
筋痛症では、ステロイド剤が特効薬です。側頭動脈炎などの合併がない
場合、比較的少量で劇的な効果がみられることもあります。
 むしろこの疾患が疑われたときには治療的診断法が有用で、少量のス
テロイド剤によって筋肉の痛みとこわばりが改善すれば、疑いが濃厚に
なります。ふつうステロイド剤服用後12時間で効果があるが、1週間続
けて効果がなければ、別の病気を考えるべきであると言われています。

今回は、筋肉痛を主症状とする原因不明の線維筋痛症とリウマチ性多発
筋痛症について解説しましたが、勿論筋肉痛を来す疾患は膠原病・リウ
マチなどを鑑別する必要がありますので、かかりつけ医や専門医と連携
をとって診察・治療を受けてください。
そして、繊維筋痛症のような心身症の部分症状と考えても良いような
疾患もあり、これで悩んでいる人も多いことを、周りも理解して対応す
るよう心がけるべきだと思います。
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関連サイト
リウマチ性多発筋痛症と診断
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/soudan/20040912sr33.htm

病気のプロフィル No.22 リウマチ性多発筋痛症
http://www.f-teisinhp.japanpost.jp/HOMEPAGE/profile/profile/ProfileNo.22.pdf

巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、リウマチ性多発筋痛症
http://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm120/kouza/kyosai.html

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2) 我々は介護保険の予防給付にパワーリハビリを導入することに反対
  します。

 先日の新聞ニュースでは「厚労省は22日、介護保険制度改革の政府案
を公表し、その中で介護予防対策の導入と、施設での利用者負担の見直し
が柱で、高齢化の進展をにらみ、給付抑制を目指している」と書かれてい
ます。
 そして給付抑制の理由に「予測以上に、「要支援」と「要介護度1」への
訪問介護などの給付が膨らんでいる事と、軽度の要介護者の増加が著しく、
給付費膨張の一因となっている事。また、家事代行など従来の在宅サービ
スが、かえって状態悪化を招くと指摘されている事。 などから、自立を促
すよう筋力トレーニングなどを対象とした予防給付に切り替え、06年4 月
から実施される予定である。」とされています。
 介護保険の給付費が膨らんでいるので、軽介護者は在宅介護サービスよ
りも、予防をすべきだという発想のようです。在宅サービスを受けたもの
が、かえって悪化したというなら、個別の事例の変化が示されるべきです
が、全体の認定数の変化だけであり、現在の要介護認定審査の実情を知ら
ずに結論を出したような印象です。
 ここでは介護保険の予防給付としてのリハビリ導入について、我々の考
えを述べたいと思います。

 筋力トレーニングの一部に「パワーリハビリ」なる新しい言葉が使われ
るようになりました。
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○ パワーリハビリテーションとは

 関連ページによると「パワーリハビリテーションという言葉を聞くと、
筋力トレーニングと誤解される方がおられます。筋トレというのは、動け
る人へのトレーニングです。すでに動ける人がより強力になろうとするた
めのトレーニングです。しかし、パワーリハというのは、実は動けない人
あるいは動く能力の低い人を活発に動けるようにするというのがコンセプ
トです。パワーリハの「POWER」は、「力」を意味するパワーではなく次
のような意味があります。
「POWER」とは
 Produce Outcome to Worth-While for Elder Re-activation
  Produce・・・・・・・ 生み出す      
  Outcome to・・・・・・ 結果      
  Worth-While for・・・・価値ある 
  Elder・・・・・・・・・   高齢者    
  Re-activation・・・・・・リハ戦略

 従ってパワーリハビリテーションとは、高齢者の活動促進、行動変容の
ために価値ある有効な結果を生み出すリハ戦略」と説明されています。

 パワーリハの特徴は、マシントレーニングをすることです。
 パワーリハは「虚弱・要支援・要介護高齢者」を対象としており、この
ような高齢者が安全で安心して使えるマシンが必要となります。パワーリ
ハ研究会では「コンパスマシン6機種」を、パワーリハ研究会推奨機器と
して紹介しています。このマシンは、ドイツ・プロクソメッド社製の「コ
ンパス」というシリーズで、もともと医療用機械として開発されたもので
す。

このようにパワーリハの説明がされています。
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○ 介護保険にパワーリハ導入

 介護予防給付に筋トレ・パワーリハが取り入れられることになった根拠
は筑波大学の久野先生たちの取り組みがはじめだと思います。茨城県大洋
村を舞台に、自宅で機器を用いずにできる簡単な筋トレが、寝たきり予防
と医療費削減に効果があると実証したことで、筋トレが寝たきり予防に効
果があるという実証でした。ただしこれは高価な機器を使わない筋トレで
した。

 その後日本医科大学の竹内先生らのグループで、神奈川県川崎市の介護
予防事業にパワーリハを行った検討では、男61名、女38名の計99名
中79名が要介護度改善が改善し。介護サービスが必要なくなり費用対効
果が大きいとの結論でした。
それならば、少々高額な機器を導入しても、全国では介護保険の要介護認
定者の増加が防げ、給付費が抑えられると、介護保険の負担に根をあげた、
自治体や、議員が飛びついた。いわば行政や議員主導の導入でしょう。
それに厚労省がくっついて外濠をうめたと言うわけです。
竹内先生らのグループでは、今後およそ1,000万人がパワーリハの対象に
なると堆計しており、パワーリハ機器メーカーにとってはすごいビジネス
です。

 身体障害を持った人たちに行う、リハビリや筋トレの効果は疑うもので
はありませんし、積極的なリハを行うことに異議はありません。その手段
として、高額なリハビリ機器を使ったリハビリが必要なら、それはそれで
問題ありません。
 しかし。介護保険制度の中で、将来の給付費を抑える目的で、このパワ
ーリハを、拙速に導入して良いのでしょうか。
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このパワーリハビリにも問題点が指摘されています。
こんな問題点が指摘されています。
 1)名称からは、「リハビリの新しい概念」のように勘違いするが、日
 本での実態は、「ある特定のメーカーの機械を使った運動の一種類」に
 過ぎない。
 2)その医学的効果、副作用、また、医療経済的な費用対効果は、不明
 (他の筋力強化訓練などと比較してどうか)
 3)医学的判断と無関係に、「何にでも効く」という療法は、これまで
 の経験では、ほとんどの場合、あやしい。
 4)医療政策として行う場合に、効果や副作用、費用対効果が不明な、
 単なる「ある特定のメーカーの機械を使った運動の一種」を、制度化し
 て、多額の保険料や税金を注ぎ込むのは、早計に過ぎて、危険である。
 5)普通は、以下のようになるはず。
  ・ある身体的、疾患的条件のグループには、他の方法に比べても非常
   に大きな効果がある
  ・あるグループには、効果はあるが、他のもっと安価な方法と同等で
   ある。
  ・あるグループは、副作用があるので、行うべきではない。

 こんな疑問に答え来られるのでしょうか。
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 介護保険制度自体が財政難で大きな曲がり角です。機器を使わない筋トレ
にしろ、パワーリハにしろ、きちんとしたやり方で継続が出来れば運動は
どれでもそれなりの効果はあるのが、臨床現場の実感です。
 勿論パワーリハは行えば、それなりの効果は間違いないでしょうが、パワ
ーリハビリを「介護保険」に導入するときの問題は
 1)機器が高い
 2)センターに集る必要がある
の2つの集約されます。
 従って、もし導入されても普及は極めて限定的であろうと思われます。
誰でも、どこでもパワーリハが行われるとは思えませんし、もしやるとした
ら、高額な機器の元を取るために事業所間の集客合戦はもっと激しいものと
なり、高額な機器を使わず、人手をかけたもっと安くて良いのがリハビリは
行われなくなると思います。介護保険給付費の抑制は出来ないものと思いま
す。

 従って、医療や介護の制度の中に組み込もうというのなら、その前に、医
学的な効果・副作用・適応、医療経済的な費用対効果をきちんと検証する必
要があると思います。
 それらの検証もなく、可能性は秘めているとしても、適応や禁忌すら不確
かな段階で、高額な医療機器を各施設に導入することを拙速に認めた今回の
見直しに、疑問があるのですが、マスコミの対応も消極的です。

 また今回の改訂で、要介護認定が現在の要支援・要介護1-5の6ランクから、
要支援と要介護1を介護と予防の2ランクに分けることになり8ランクになる
とのことです。
 現在の要介護認定審査そのものを簡素化したいと思っている現場の声は無
視した改革ですし、コンビューターを使った一次判定では非該当・要支援・
要介護1の区別がつかないことがわかっている状況で、それに若干の質問項
目を追加しただけで、もっと詳しく分類することを審査会に求めるのなら、
我々審査員は審査出来ないものを審査することになるわけですから、できな
いものはできない、無理なものは無理との声をあげても良いのではないでし
ょうか。
 介護予防のメニューは、認定審査会での無理のある切り分け(スクリーニ
ング)ではなく、包括的なケアマネジメントの中で、きちんとしたアセスメ
ントを経て、プランニングされるべきだと考えます。
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○ 介護保険にパワー・リハビリテーション導入反対!

 かかりつけ医通信の編集委員の一人、牧瀬のホームページでは厳しい
指摘がされていますので全文を紹介します。
 http://intmed.exblog.jp/m2004-12-01#1437717
 
 介護保険認定で軽い程度、といっても自宅から自力で出られないなど
の人たちという足腰の弱った方々や痴呆性老人(認知症というべきか)
の方々です。こういう人たちをトレーニングジムに通わすようにほぼ強
制的に行うことを介護保険でやろうとするものです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
 パワーリハビリというのに非常にいかがわしさを感じております。この
いかがわしさに気づいている人たちが声を上げているのに、第二の国保と
なるであろうと警告をしていたにもかかわらず今の形の介護保険を行った
同じやり口で、その場しのぎのパワーリハビリを導入としております。
 これは対象者をよく理解してないからこういうことができるのです。
 机上の空論。なぜなれば対象者は高齢者です。様々な疾病、特に運動に
関して十分配慮すべき疾患、心臓疾患、肺疾患、腎臓・肝臓、筋肉・関節
疾患、他の老化に関わる状態を抱えています。老人を筋肉もりもりにする
ためにはもともと健康な人が望ましく、また、疾病を有する場合は一人一
人の処方が必要となります。多大なる負担となることでしょう。
 そして、さらに問題は動機づけです。やる気がなければ継続するはずが
ありません。継続しなければ無駄この上ありません。もし国家が強制して
行わせるとしたら人権の問題にもなりますし、その上に心身に問題がある
場合におこなうことのリスクを国家が補償するのでしょうか。どれほどの
損害をもたらすかかんがえて事があるのでしょうか。

 運動療法に関しては、動機づけのイニシエーション・維持にもっとも金
をかけるべきです。高齢者には骨折の危険のある骨粗鬆症、心肺疾患に問
題がある患者など多くこのアセスメントの費用もかかるのです。
 isometricな運動に関しては、自宅でも続けられる方法を代換的なものが
ありますし、わざわざ、ジムのようなところにあつめて、器械の順番待ち
させておこなうなんて非現実的だと思います。かなりドロップアウトも多
いだろうし、需給関係のミスマッチも相当かんがえられます。

・パワーリハビリテーションプログラム前に心肺・運動系の耐容の有無が
問題となり、スパイロや運動負荷心電図などの検討、筋・関節などの評価
が求められる。この方の負担はどうするのか?
・事故発生時、医師不在の施設・救急対応がなされてない場合の責任の所
在は?

 一番よくわからないことは高価な器械を制度として強要することです。
 製品の信頼性などとふざけたことを業者が主張するままに特定の高価な
医療機器に限定しようとしております。わたしなどは等張性運動はゴム弾
性をもちいた安価な方法でよいと思っております。むしろ安全性を確保す
るためのマンパワーこそ重要です。高価な器械が安全・有効性が高いとも
思えないのです。
 提言者や業者と独立した検討された多くのコミュニティーレベルの調査
研究評価が必要です。

ある施設に集めて行おうとすることも問題です。
高価な器具と利用の需給関係がくづれるとどうなるか。ドロップアウトが
相次ぎ、ほこりだらけの高い器具が山積み。特定の元気の良い老人だけが
機器をつかう。保険というのはあまねく負担を出し合い、事故(この場合
は疾病事故を含む)を生じたときに支給されるものです。特定の人にだけ
支給されるというのは。保険の概念にふさわしくありません。要するに状
態の良い人だけが保険給付を受けられるという矛盾した状態を生むわけで
す。保険給付にはふさわしくありません。

特定の地域で効果が上がったと言いますが、介護保険要支援〜I/IIの
対象者全例で検討されたものでしょうか?保険上の仕組みとして組み入れ
るのなら、全例で何%がパワーリハビリの対象者になったのか、ドロップ
アウト率、事故率(身体疾患事故を含む)などが明示され、リスクとベネ
フィット、費用対効果などがコミニュティーレベルであかされなければな
りません。

成功例だけプレゼンテーションしていて何がすぐ介護保険ですか。あまり
に利用者や保険負担者を馬鹿にしてませんか?

問題の多いパワーリハビリ導入に反対致します。
拙速な導入は待ったをかけましょう。
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○ 参考サイト
パワーリハビリテーション研究会
http://www.powerreha.jp/

パワーリハビリとは
http://www.shigei.or.jp/shigei/powerriha02.htm

パワーリハビリテーション
http://www.roken.or.jp/member/book/r14/12/r1412-take.htm

パワーリハビリテーションとは
http://www1.ocn.ne.jp/~kiji/tayori.html

介護予防と整形外科(朝日メディカル特集号)
http://www.orth.or.jp/seisaku/siryou/kaitei/h16/asahi.pdf
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●【WEB】 http://www.docbj.com/kkr/
  ご意見・ご感想等ございましたら、以下のメールアドレスへ
【MAIL】   kotui@docbj.com   
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の旨御明記願います。
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【発行】「かかりつけ医通信」発行委員会
 当委員会は、趣旨に賛同した医師による、自発的な会です。
 他の既存の団体や会社に所属しているものではありません。
【編集】
(委員長)長島公之:長島整形外科(栃木県) 整形外科医
      http://www.docbj.com/
(委 員)五十音順
 安藤潔:荒川医院(東京都) 内科医
  http://www2u.biglobe.ne.jp/~andoh/
 外山 学:益田診療所(大阪府) 内科医
  http://www.toyamas.com/masuda/
 本田忠:本田整形外科クリニック(青森県) 整形外科医
  http://www.orth.or.jp/
 牧瀬洋一:牧瀬内科クリニック(鹿児島県) 内科医
  http://intmed.exblog.jp/
 吉岡春紀:玖珂中央病院(山口県) 内科医
  http://www.urban.ne.jp/home/haruki3/index.html
 吉村研:吉村内科(和歌山県) 内科医
  http://www.nnc.or.jp/~ken
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