━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 かかりつけ医通信    第60号   2003年11月3日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    健康・医療のお役立ち情報・・・医療の現場から
 私達は、医療の現場で働く臨床医です。実際の診療やネット上から
 得た健康と医療の役に立つ情報を、市民の皆さんにお届けします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼目次▼
 1) 有床診療所について
 2) インフルエンザの予防接種について
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1) 有床診療所について

○病院以外の入院施設

かかりつけ医通信では58号で、病院の病床区分について説明しましたが、日
本には「病院」の他にも入院できる施設があります。
病院以外の入院施設とは何かというと、有床診療所のことですが、一般には
病院の一部と思われている方も多いと思います。
病院と有床診療所の区別は後で少し説明いたしますが、簡単に言えば病院は
20床以上のベット数の入院施設、有床診療所は19床以下の施設ということも
出来ます。
これは古く昭和23年のGHQによる医療法の制定により、19床以下を診療所、
20床以上を病院と規定したことによるとされていますが、その後何度かの医
療法改定でも変更されず、また昭和60年の医療法改正時の地域保健医療計画
の際に地域の病床規制がなされた時にも、有床診療所の病床数は医療圏の病床
数にカウントされませんでしたので、地域の病床数からも外された、いわば
我が国独特の入院施設ということも出来ます。
しかし現在でも有床診療所の存在は大きく、地元に密着した入院機関として病
院にない利便性もありますので、これからも存続して行くと思いますが有床診
療所にも診療科によっては存続の危機が訪れています。
今回は有床診療所についてご紹介します。

-----------------------------------------------------------
○有床診療所の病床数

有床診療所は、患者の大病院志向や診療報酬の圧迫もあって経営は厳しく、廃
院や人件費減らしの無床化が進んでいます。全国の病床数は80年代の29万床を
ピークに減り続け、昨年には23万床、そして今年の新しい統計では19万2000
床を切っています。

9月末に発表された厚労省の医療施設動態調査では本年7月、日本の一般診療所
の施設数は95,942施設で、そのうち有床診療所の施設数は15,633施設、総病
床数は191,198床となっています。そして本年6月の192,091床から7月には
191,198床と1ヶ月で893床も減少しています。 
従って日本の一般・療養の病床数は全国の病院の一般・療養病床数126.8万と
有床診療所の19.1万床を併せて約146万床ということも出来ます。
これは日本の全ベット数のうち有床診療所のベットが約13%を占めていること
になりますので有床診療所の占める病床数の割合は大きいと言えます。

有床診療所の開設者別の分類では個人立85,000床、医療法人立98,000床とな
っていますが市町村立も3,400床、国(その他)立も2,300床あります。
市町村立の有床診療所の病床が結構あることに気づきますが、前述しましたよう
に有床診療所のベット数は地域医療計画ではベット数にカウントされないため、
有床診療所の設立には規制もありませんでしたので、設立が容易で病院の無い
地区、病床規制で病院が認可されない地区、医師不足の過疎地区などで、自治
体立の病院に変わる入院施設として運営されているものもあると思います。
特に過疎の人手不足の地区では入院できる施設として、病院から有床診療所へ
の転換もあるようです。
------------------------------------------------------------
○ 有床診療所の「療養病床」

これまでは有床診療所の病床は病院の病床区分からいえば一般病床に当てはま
るものだけでしたが、厚生省は、介護施設の不足解消のため、病院にだけ認め
ていた一般病床から療養病床への転換を、有床診療所にも認めました。療養病
床に転換した診療所は今年7月現在、全国で2,558施設、病床数は24,198床
となっています。有床診療所の約12.5%が療養病床に転換されたことになりま
す。一般病床としての有床診療所の生き残りが厳しい中、療養病床への転換は
今後も少しずつ増えています。
ただし、一般病床の場合にはこれまで通り医療計画の対象外ですが、療養病床
は医療計画の対象となり病床のカウントがされる事になっていますので、医療
法の対象施設となり認可が必要となっています。

医療施設動態調査(平成15年7月末概数)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/m03/is0307.html
-------------------------------------------------------------
○ 有床診療所の設置基準

人員配置については、有床診療所では医師数は1人で設立可能です。薬剤師の常
駐も必要ありませんし、看護職員の規定は診療報酬に関係しているだけです。
ただし「療養病床」の場合は看護職員数の基準は病院の設置基準と同じです。
看護職員(看護師・准看護師)・看護補助者とも患者6に職員1ですが、当分の間
看護職員+看護補助者で3対1、看護職員はそのうち1人でも移行型として認めら
れています。

病床の面積や建物の基準も病院とほぼ同じですが、一般の病床には病床面積4.0
平米程度で、大きな規制はありません。「療養病床」の場合、完全型にはやはり
病院と同じく病床面積は6.4平米、廊下幅も同じ、食堂・浴室も必要ですので、
今までの有床診療所から療養病床への転換にはかなり大改造や改築が必要だった
ものと思います。

--------------------------------------------------------------
○ 有床診療所の入院料

入院基本料は病院の入院基本料と比べてかなり低額の設定となっています。
有床診療所の場合は医師数・薬剤師数などに規制がないため看護職員数をクリア
出来れば認可されますので、病院と同じ基準の入院基本料というわけには行きま
せんが、下記の資料に示す病院の入院基本料と比べると病院の中で人員配置の少
ない一番低いII群の入院基本料5(平均在院日数規定なし、看護職員4対1、正看
護師比率4割)の料金よりも、有床診療所で一番高いI群入院基本料1(看護配置10
人以上)の方が成人で820点と489点、老人で844点と465点と言うように1日で
約3500円くらい安い設定で、入院期間短期の加算も病院は14日まで、診療所は
7日までに細かくなっていますし、病院の加算が多いようです。

入院基本料は主に人件費ですので病院の職員数と有床診療所の職員数には差が
ありますが、I群入院基本料1なら19床の診療所に10人以上の看護職員を配置
していることになり、看護職員数では病院のII群入院基本料3と同じくらいなの
に入院基本料は病院の約半額しかないと言うことも言えます。

また、有床診療所の入院基本料の設定もI群、II群にわかれて、その上看護職員
数によって5区分と複雑にわかれていますし、看護師配置加算などもありますが、
もう一つよくわからないのが下記の表の入院基本料1〜3の看護配置による差で
す。入院基本料1は10人以上、基本料2は5人、基本料3は1人となっています。

例えば入院基本料1と2では入院基本料は489点と456点で33点の差しかありま
せん。一般患者19床の診療所1ヶ月の収入の差は33点X19人X30日で約19万円
です。これが看護職配置5人分の人件費にはほど遠い設定です。
入院基本料1と3でみても1日の差は489-415=74点ですので全体では74点X
19人X30日で1ヶ月約42万円です。看護職員は10人と1人ですので看護職以外
の補助者の人件費を出しているとは言え42万しかなければ、看護職員の確保も
出来ないことになります。
療養病床の場合も病院とは人員配置は同じなのですが1日当たりの基本料は老人
で1151点-798点=353点の差がついています。

このように有床診療所の入院基本料が病院に比べて低価格で抑えられていること
は有床診療所の運営に大きな問題だといえます。
その他入院に関しての投薬や処置、手術などは病院も有床診療所も大きな差はあ
りませんので、入院料の差は入院基本料の差ということが出来ます。
もう一つ有床診療所にはよくわからない設定があります。有床診療所の入院基本
料には看護配置は「1人」か「なし」というII群が設定されこの基本料は380点
・345点ともっと低額なのですが、これには特別看護加算というものがあり患者
さん1人に看護師1人が特別看護行ったとき、1日1120点を加算出来るようにな
っています。入院基本料は人員配置による診療所のランク付けなのに、特別看護
加算は、看護職員が少ないところしか加算できない不明な点数です。詳しくはわ
かりません。

資料 病院と有床診療所の入院基本料     (点)
----------------------------------------------------------------
【病院】II群 平均在院日数29日以上
      基本料   14日以内 15-30日 31-179日 180日以上
 初期加算  一般    312    167    0    −30
       老人    267    255    0    なし
 初期加算は入院期間30日までの短期間の入院に加算、30日超えると加算無し。
 180日を超えると一般は減算されます。
 下記の点数は基本料金に初期加算点数を加えたものです。
   一般病床では期間によって加算がありますがほぼ30日で加算はなくなり
   逆に療養病床には最初から加算はありませんが減算もありません。
-----------------------------------------------------------
      基本料   14日以内 15-30日 31-179日 180日以上
 入院基本料3 (平均在院日数60日、看護職員3対1 正看護師比率4割)
      一般 974  1286       1141   974     944
      老人 1001      1268     1157   1001   1001
 入院基本料5 (平均在院日数なし、看護職員4対1 正看護師比率4割)
      一般 820      1132      987   820    780
      老人 844      1099      982      844            844
----------------------------------------------------------------
 療養 療養病床入院基本料1
      一般 1209  1209      1209        1209     1209
      老人 1151  1151      1151      1151     1151
---------------------------------------------------------------
---------------------------------------------------------------
【有床診療所】 I群
        基本料    7日以内   8-14日 15-30日   31-89日 
90日以上
 初期加算  一般   223   188   85    47    0
       老人   220   206   104      69      0
 有床診療所の短期加算は1週間毎に安くなりますが90日まで加算があります。
-------------------------------------------------------------
       基本料      7日以内   8-14日 15-30日   31-89日  90日以上
 入院基本料1 (看護配置 10人以上)
      一般 489       712    677      574         536      489
      老人 465   685      671      569         500        465
 入院基本料2 (看護配置 5人以上)
      一般 456              略 
      老人 431
 入院基本料3 (看護配置 1人以上)
      一般 415            略 
      老人 390
II群は省略
-------------------------------------------------------------
 療養病床入院基本料  完全型
      一般 816    816     816   816        816     816
      老人 798    798     798     798      798   798
-------------------------------------------------------------
○ 有床診療所の問題点 48時間規制について

有床診療所が抱える問題には診療報酬の問題ともう一つ大きな問題があります。
それが48時間規制と呼ばれているものです。
医療法第13条には「診療所の管理者は、診療上やむを得ない事情がある場合を
除いては、同一の患者を四十八時間を超えて入院させることのないように努め
なければならない。ただし、療養病床に入院している患者については、この限
りでない。」と規定されているからです。
我々医療関係者を含めて、一般の人でこの規制があることを知っているがどの
位いるのでしょうか。知らない人の方が断然多いと思います。と言うことは知
らないまま、診療所の入院で特に問題になることもなくやってきていることと
は言えますが、逆に言えば何故こんな規制が医療法に盛り込まれ、今でも撤廃
されていないのかが、疑問でもあり問題なのです。

この規制は昭和23年に制定された医療法で制定され、この48時間規制が長い
間有床診療所の手枷足枷になっていました。
全国有床診療所連絡協議会会長 内藤哲夫先生によれば「当時は戦渦の後で、
病院も少なく病床も少なく入院設備も十分に整っていない時代で、診療所でも
入院させていいですよ、ベッドの規制も何もありませんので何処でもよいから
急病人は入院させて下さい。ただしお困りの医療機関もあるでしょうから、そ
の時は48時間位にして下さい。しかし、主冶医が病状を見て、もっと必要だ
という時にはその限りではないですよという、そんな時代の医療法13条であ
ります。」とされ、戦後の混乱期の規定のようです。

有床診療所は後で制定された療養病床以外は原則として48時間以上入院させて
はならないという条項なのですが実態は診療報酬点数にも48時間以上の設定が
されていますし、48時間以内に退院させているところはまずない現状なのです。
そして現状にそぐわないこの規定の撤廃要求も出されているにもかかわらず厚
労省は未だに撤廃していません。
何故この現実離れした規定が外されないのかが、むしろ関係者には不安なのだ
と思います。この背景には昭和60年代の医療法改正時の地域保健医療計画によ
る病院の病床規制がなされましたが、診療所の病床はその中にカウントされな
いことにりました。そしてこの頃、厚生省の健康政策局長の、「有床診の果た
した歴史的な役割は終わったと発言」など、有床診療所をいつでも廃止できる
ように残しているのかと言う不安があるのです。
今回の医療法改定でも上記のようにわざわざ「療養病床に入院している患者に
ついては、この限りでない」と注釈をつけていますが48時間の文言は廃棄はさ
れていませんでした。
今年になって有床診療所連絡協議会や日本医師会から有床診の「48時間規制
撤廃」に向け厚労省に強い働きかけ要請が行われており、近い内に解決するか
も知れません。

ただし医療法の解説書には「患者を入院させ、そこで十分な科学的医療が行わ
れるためには、設備その他が相当整備されていることを必要とするが、診療所
はこの点が不十分であり、本来患者を入院させ、本格的な医療を行うことを本
旨としないものであるため、患者の入院について一定の制限を設けているとこ
ろである。」とも記載されており、48時間規制を廃止すれば、病院に求められ
ている基準に準じたあらたな要件が求められ、特に問題は複数医師の配置、看
護職員の増員配置、外来患者の規制などが求められる可能性があると言われて
います。
我が国独自の入院施設と言っていい有床診療所を今後どうするのか、後述の存
在意義も含めて真剣に討議する必要があると思います。

全国有床診療所連絡協議会ニュース
http://www.ozasa.sakae.yokohama.jp/yuushin/03916.htm
メディファクス4238号
http://www.ozasa.sakae.yokohama.jp/ozasa/03711a.htm
---------------------------------------------------------------
○ 有床診療所の存在意義

このことに関して、日本産婦人科学会理事の小林高先生は「有床診療所問題
について」でこんな風に述べられています。
     --------------------------
「このままでは、いずれ有床診療所は消滅してしまうのではないでしょうか。
消滅することが国民にとって、国民の健康を守り、病気を治療するためにプラ
スの方向に働くのであればやむを得ないかもしれません。
1999年の統計によりますと、病院での出産が63万4000、54%です。有床
診療所での出産は52万9000、45%でした。あと1%の方が助産所や自宅分
娩です。この割合はここ数年ほとんど変わっていません。その中で帝王切開
が病院9万5000件、有床診療所6万3000件です。出産ということを取り上げ
てみますと、この数字でおわかりのように、有床診療所が国民のために果た
してきた役割は非常に大きいのです。妊婦さんの半分近くが有床診療所を選
び、出産しておられるのです。その他にも母体保護法に関連する処置や手術
で有床診療所は大きな役割を果たしてきました。
 私が住んでいる岩手県の盛岡地域には11市町村があります。病院1947、
43%で診療所出生が2619、57%です。診療所で出産している方がはるかに
多いです。
他科ではどうか 外科系や整形外科では小手術はもちろんですが、消化器系
の手術や骨折、交通外傷なども手がけています。眼科では白内障手術が代表
的でしょう。その多くは48時間以内に退院していただくことは困難な病気や
怪我です。そして自費入院が多い産婦人科に比較すると、極端に低い入院料
は赤字を生み出しております。内科の多くは療養型病床に転換しており、転
換できないところは無床診療所に変わってきています。」
      ------------------------
この様に有床診療所の中でも、病院の少ない過疎地や、単科の有床診療所で
は地元に密着した医療を続けてきたわけであり、十分に存在価値はあると思
います。そして診療報酬で大きな差があったように、有床診療所では低報酬
の入院費で多くの入院患者さんを受け持ってきた実績もあり、言うならば国
の低医療費計画に協力してきたとも言って良いでしょう。
産科の正常分娩の入院は、保険診療にならないので医療費の計算には関係な
い部分ではありますが、外科・整形外科・眼科などの手術入院は、病院に入
院するよりもずっと安い医療費で済むのです。

日本独自の入院施設・有床診療所について現状と問題点を考えてみましたが
地域に密着した入院施設として経営の安定や医療の向上が出来よう、有床診
療所が継続してゆけるようもっと真剣に検討されて良いのではないでしょうか。

有床診療所問題について
http://www.jaog.or.jp/JAPANESE/MEMBERS/TANPA/H15/030714.htm
有床診療所経営実態調査アンケート
http://www.ozasa.sakae.yokohama.jp/yuushin/03521a.htm

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2) インフルエンザの予防接種について

今回はインフルエンザの予防接種の話です。
特に今年はSARSの影響で世界のインフルエンザシーズンへの対策が変わりま
したので、予防接種への関心が強くなっています。

なぜならば、この冬に再びSARSが世界中で流行しないという保障はなく、万
一SARSが流行すれば、初期症状はインフルエンザと明確に区別できないから
です。SARSウイルスの今後の動向は、現在の知見からは予想不可能ですが、
ウイルスによる呼吸器感染症には、気温と湿度が上昇したときに死に絶え、そ
の後気候が涼しくなってまた戻ってくる傾向があることがよく知られています。
従って、この冬のインフルエンザの流行がSARSの流行と重なれば「SARSの
疑惑」を生じ易い時期でもあるからです。
重症例では肺炎を合併し、ハイリスクでは死亡率も高いインフルエンザの症状
は、SARSの症状と混同し易く、同時に流行すれば鑑別に混乱するのは目に見
えています。また、世界中の保健・医療システムがSARS「疑い例」や、その
密接な接触者の隔離、接触者追跡調査、検疫といった費用がかかり、社会的に
も大きな対策が必要となります。

初期段階でSARSを除外し、こうした対策の必要性を取り除く、迅速で簡易な
診断検査はまだ存在しないために、より負担が重くなっていると言われていま
す。
インフルエンザを予防する最も有効な方法は、毎年インフルエンザ予防接種を
受けることであり、インフルエンザに対する予防接種の安全性・有効性は確か
められています。そのためにWHOはすべての国のインフルエンザとSARSの
両方への罹患リスクが高い医療従事者に対して、予防接種を行うように勧めて
います。
そして医療関係者だけでなく、施設内で介護を受けている高齢者や、慢性の心
血管系・呼吸器系疾患の患者、そのほか感染リスクがある人々にも、ワクチン
接種が行われるべきですし、海外出張者や流行地に旅行しなくてはならない人
にも行うべきだと思います。
インフルエンザワクチン接種によって、SARSと間違えられる肺炎症例の数を
減少させることができると考えられます。

この様な事情から、今冬は特にワクチンの予防接種が勧められていますし、多
くの方が接種を受けられると思います。
先日、日本医師会と厚労省は共同で「今冬のインフルエンザ総合対策について」
(平成15年度)というホームページを開設し、一般向け・医療従事者向けに
分かり易いQ&Aを公開しました。

日本医師会 「今冬のインフルエンザ総合対策について」
http://www.med.or.jp/influenza/index.html
 ■インフルエンザQ&A【一般の方々のために】
 http://www.med.or.jp/influenza/inqa_b.html
 ■インフルエンザQ&A【医療従事者の方のために】
 http://www.med.or.jp/influenza/inqa_e.html

厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/houdou/0111/h1112-1.html

そこで今号には日本医師会・厚労省のホームページの一般向けと医療従事者向け
のQ&Aから、予防接種に関する項目を抜き出し紹介します。一部省略している部
分もありますので詳細は上記サイトまたは下記の関連サイトでご覧下さい。

-----------------------引用開始----------------------------
◎インフルエンザの予防接種はいつごろ受けると効果的でしょうか?

インフルエンザに対するワクチンは、その効果が現れるまで約2 週間程度かかり、
約5 ヶ月間その効果が持続することと、多少地域差はありますが、我が国のイン
フルエンザの流行は12 月下旬から3 月上旬が中心になりますので、12 月中旬ま
でに接種をすまされることをお勧めします。2 回接種では、2 回目は1 回目から
1〜4 週間あけて接種しますので、1回目は早めに接種しましょう。
-------------------------------------------------------
◎昨年インフルエンザの予防接種を受けたのですが今年も受けた方がよい
 でしょうか?

毎年接種することをお勧めします。インフルエンザウイルスは毎年変化しながら
流行するため、今年流行が予測されるウイルスにあったワクチンを接種しておく
ことが有効です。ワクチンが十分な効果を持続する期間が約5 か月と短期間であ
ることを考慮すれば、毎年インフルエンザが流行する前に接種を受け、免疫を高
めておくことが必要です。
また、シーズンごとに流行する株が異なることがあるため、ワクチンも毎年新し
いものが作られています。今シーズンのワクチンはA型2 種類もB 型も昨シーズ
ンと同じで、A/New Caledonia/20/99 (H1N1)、A/Panama/2007/99
(H3N2)、B/山東/7/97 です。
-------------------------------------------------------
◎インフルエンザの予防接種は効果がありますか?

予防接種を受けないでインフルエンザにかかった人の70%から80%の人は、イン
フルエンザの予防接種を受けていれば、インフルエンザにかからずにすむか、か
かっても症状が軽くてすむという有効性が証明されています。特に高齢者の場合
は、インフルエンザによる入院・死亡を減らすことが証明されています。
WHO が推奨した株を基本にして我が国の流行状況などから予測して作られた我
が国のインフルエンザワクチンは、この約10 年間、予測と流行したウイルス株
はほぼ一致しており、有効なワクチンが作られています。
特に65 歳以上の方や基礎疾患を有する方(気管支喘息等の呼吸器疾患、慢性心
不全、先天性心疾患等の循環器疾患、糖尿病、腎不全、免疫不全症(免疫抑制剤
による免疫低下も含む)など)はインフルエンザが重症化しやすいので、かかり
つけの医師とよく相談のうえ、接種を受けられることをお勧めします。なお、当
然のことですが、インフルエンザの予防接種では他のかぜウイルスによる「かぜ」
(かぜ症候群)を防止することはできません。
----------------------------------------------------------
◎インフルエンザの予防接種は何回受ければよいのでしょうか?

現在、日本で行われているインフルエンザの予防接種に使用するインフルエンザ
HA ワクチンについては、平成12 年4 月に中央薬事審議会において最近の研究
成果を踏まえ、接種回数の見直しにつき審議が行われ、用法・用量は以下のよう
になっています。

 ○13歳以上0.5mlを、1回又はおよそ1 〜4週間の間隔をおいて2回接種する
 ○6歳〜13歳未満0.3mlを、およそ1〜4週間の間隔をおいて2回接種する
 ○1歳〜6歳未満0.2mlを、およそ1〜4週間の間隔をおいて2回接種する
 ○1歳未満0.1mlを、およそ1〜4週間の間隔をおいて2回接種する
-------------------------------------------------------------
◎インフルエンザの予防接種が1 回でもよいのはどのような場合でしょうか?

65 歳以上の高齢者に対しては1回の接種でも十分効果があるとする研究結果
が得られており、1 回接種でよいと考えられます。

13 歳以上64 歳以下の方でも、近年確実にインフルエンザに罹患していたり、昨
年インフルエンザの予防接種を受けている方は、1 回接種でも追加免疫による十
分な効果が得られる方もあると考えられます。接種回数が1 回か2 回かの最終的
判断は、接種する医師の判断によりますので、接種の際にはこれまでのインフル
エンザにかかったことのあるなし、ワクチン接種のあるなしとその時期、そして
現在の体調などを担当医師に十分伝え、相談して下さい。

なお、予防接種法により、「5歳以上の方」、「60歳から64歳までの方で、心臓、
じん臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の周りの生活を極度に制限される
方、又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほと
んど不可能な方」については、年1回、定期の予防接種を受けることができ、万
が一予防接種による健康被害にあっても予防接種法による救済制度が適用されま
す。
----------------------------------------------------------
◎インフルエンザの予防接種を受けることが適当でないのはどんな場合です
か?

ワクチン接種には不適当と考えられる方は以下のように示されています。
<予防接種実施規則第6 条による接種不適当者(抜粋)>
 (1) 明らかな発熱*を呈している者
   *:通常は、37.5℃を超える場合をいいます。
 (2) 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
 (3) 当該疾病に係る予防接種の接種液の成分によってアナフィラキシー
   ショックを呈したことが明らかな者
 (4) その他、予防接種を行うことが不適当な状態にある者

---------------------------------------------------------------
◎インフルエンザの予防接種の費用はどうなるのですか?

予防接種については、保険適用がないため、原則的に全額自己負担となります。

ただし、「65 歳以上の方」、「60歳から64歳までの方で、心臓、じん臓若し
くは呼吸器の機能に障害があり、身の周りの生活を極度に制限される方、又は
ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不
可能な方」については、予防接種法上の定期の予防接種が受けられ、市町村に
よっては、費用の一部を公費で負担しているところもあります。(予防接種法
上の対象者の範囲及び接種費用の詳細については、市町村にお尋ね下さい。)
--------------------------引用終わり---------------------------
編集部注  予防接種の費用
65歳以上の方には昨年から、公的補助が行われ、多くの市町村で4000円程度
(自己負担は1000円くらい)で接種できるようになっています。多少市町村によ
って補助金額が違います。
予防接種法上の対象者以外の接種料金は各医療機関で設定され、医師会や地域
の価格は統一出来ないことになっています。そのため医療機関によって料金に
差がありますし、初回と2回目でも違うことがあります。接種前に確認してお
いて下さい。
この様に原則として高齢者以外の補助はありません。破綻した学童のインフル
エンザ予防接種システムも再検討すべき課題だと思います。
高齢者の予防接種についても、インフルエンザに罹患したら生命リスクが高い、
寝たきりや意識障害の方たちは自分の意志で接種することの確認がとれない場
合は、公費での接種は出来ない仕組みとなっており、家族から希望されても出
来ないこともあり介護施設や長期療養の病院で混乱しているのも現実です。
これも早急に解決していただきたい事項です。

今冬のSARSの世界的な流行がないことを祈りますが、年齢を問わずインフル
エンザワクチンの予防接種は出来るだけ受けた方が良いと思います。
特に高齢者は流行前に予防接種を受けましょう。これはインフルエンザ予防の
基本だと思います。
------------------------------------------------------
○その他 関連サイト

厚労省 インフルエンザ予防接種ガイドライン等検討委員会
平成13年11月(平成15年9月改編)

インフルエンザ予防接種 ガイドライン 
http://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/tp1107-1e.html
インフルエンザと予防接種
http://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/tp1107-1f.html
インフルエンザ予防接種実施要領
http://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/tp1107-1d.html

国立感染症研究所感染症情報センター
今冬のSARSおよびインフルエンザについて
http://idsc.nih.go.jp/others/urgent/sars03w/home.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
●4月からHPとメールのアドレスが変更になっています。
【新しいWEB】 http://www.docbj.com/kkr/
  ご意見・ご感想等ございましたら、以下のメールアドレスへ
【新しいMAIL】   kotui@docbj.com   
---------------------------------------------------------
購読のお申し込みと削除は、上記のホームページから直接出来ます。また過
去に発行したメールマガジンはこのホームページで参照可能です。
----------------------------------------------------------
 最近、読者の皆様から編集部宛にいろんなメールをいただいております。皆
様からのご意見も参考にして、メルマガ「かかりつけ医通信」の紙面づくりに
生かして行きたいと考えておりますので、どうぞご意見をお寄せ下さい。また
皆様から寄せられたメールは、出来るだけ紙面でご紹介していきたいと考えて
おりますので、事前の承諾なしにメルマガに掲載させていただく場合がござい
ます事をご了解下さい。匿名などのご希望や、掲載を望まれない場合には、そ
の旨御明記願います。
----------------------------------------------------------
【発行】「かかりつけ医通信」発行委員会
 当委員会は、趣旨に賛同した医師による、自発的な会です。
 他の既存の団体や会社に所属しているものではありません。
【編集】
(委員長)長島公之:長島整形外科(栃木県) 整形外科医
      http://www.docbj.com/
(委 員)五十音順
 安藤潔:荒川医院(東京都) 内科医
  http://www2u.biglobe.ne.jp/~andoh/
 外山 学:益田診療所(大阪府) 内科医
  http://www.toyamas.com/masuda/
 本田忠:本田整形外科クリニック(青森県) 整外外科医
  http://www.orth.or.jp/
 牧瀬洋一:牧瀬内科クリニック(鹿児島県) 内科医
  http://clinic.makise.or.jp/
 吉岡春紀:玖珂中央病院(山口県) 内科医
  http://www.urban.ne.jp/home/haruki3/index.html
 吉村研:吉村内科(和歌山県) 内科医
  http://www.nnc.or.jp/~ken
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━