グラフで見る診療所(開業医)の収入
   新聞報道 開業医黒字、月228万円 のトリック  (旧版はこちら

   マスコミは、「開業医黒字、月228万円、前回調査より0.9%増加」などと一斉に伝えました。この数字は、2年に1度行われる医療経済実態調査(今回は平成17年6月)における「個人立診療所」の収支差額に基づいています。そこで、実際の調査内容や結果を、平成元年からさかのぼって、検証してみると、以下のようなトリックが隠されていました。
トリック
1)開業医の給与額ではない
 個人立診療所という事業所の黒字ですから、開業医という個人の給与だけでなく、土地や建物などのイニシャルコスト(借金)の返済額、建物・設備の改善や修理に備えるための内部資金など数十万円分の金額も、その中に含まれています。従って、単純に、勤務医の給与とは比較できません。

2)「一般的な診療所」の黒字は、100万〜150万円の間(グラフ1
 実際のデータの分布の仕方をみると、100万〜150万円の間が一番多く、そこを頂点とした山型の分布をしています。少数の高額の施設が、全体の平均値を引き上げています。

3)平成元年からの経過を見ると、大きく減少したまま(グラフ2
 平成11年から収入は減り続けており、それ以上に、費用を切りつめることで、黒字を保っています。

4)働いた日が1日、前回より多い
今回(平成17年6月)は、前回(平成15年6月)より、曜日の関係で、診療日が1日多いので、その分を割り引く必要があります。

【グラフ1】「一般的な診療所」の黒字は、100万〜150万円の間

個人立診療所(有床・無床)の収支分布

平成13年6月 平成15年6月 平成17年6月
平均値 251.6万円
一番多いのは、100万〜150万円の間
平均値 226.7万円
一番多いのは、100万〜150万円の間
平均値 228.7万円
分布はまだ未公開


【グラフ2】平成元年からの経過を見ると、大きく減少したまま
平成11年から収入は減り続けており、それ以上に、費用を切りつめることで、黒字を保っている

個人立診療所の収支(6月の1ヶ月分)

平成元年を100%とした変化率

個人立診療所(有床・無床)


(単位:万円)

元年 3年 5年 7年 9年 11年 13年 15年 17年
医業収支差額 263.2 221.9 216.9 225.1 199.6 236.8 251.6 226.7 228.7
医業収入 730.1 739.7 760.1 795.4 719.2 792.7 745.3 676.1 656.6
医業費用 467.0 517.8 543.3 570.4 519.6 555.9 493.7 449.4 428.0
施設数 1179 1133 1145 1013 936 893 719 599 633

平成元年を100%とした変化率

元年 3年 5年 7年 9年 11年 13年 15年 17年
医業収支差額 100.0% 84.3% 82.4% 85.5% 75.9% 90.0% 95.6% 86.2% 86.9%
医業収入 100.0% 101.3% 104.1% 108.9% 98.5% 108.6% 102.1% 92.6% 89.9%
医業費用 100.0% 110.9% 116.3% 122.1% 111.3% 119.1% 105.7% 96.2% 91.6%

資料

第15回医療経済実態調査の結果速報−平成17年6月実施−

第14回医療経済実態調査の報告(平成15年6月実施)

第13回医療経済実態調査(平成13年6月調査分)

医療経営白書 2002年版( 日本医療企画


 長島整形外科 長島公之(栃木県)

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