━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 かかりつけ医通信     第34号   2002年7月10日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    健康・医療のお役立ち情報・・・医療の現場から
 私達は、医療の現場で働く臨床医です。実際の診療やネット上から
 得た健康と医療の役に立つ情報を、市民の皆さんにお届けします。

▼目次▼
1) 情報源の検証
   小内 亨(おない とおる)先生のページから
2) 基本健診結果の活用

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1) 情報源の検証
   
 今回は「健康情報の読み方」というホームページを運営されています
 小内 亨先生のページから許可を得ましたので一部をご紹介します。
「健康情報の読み方」
  http://www.page.sannet.ne.jp/onai/

-------------------------------------------------------------
「情報源の検証」
 その情報源がどの程度信頼できるか検証する必要があります

○テレビ番組のなかでの実験をそのまま鵜呑みにしてはいけない

 最近のテレビ番組での健康関連の情報は、積極的に専門家に取材することに
より、 確かに情報の正確さが増しているようです。その中で、しばしば説得力
を増すために 番組の中で実際に実験をしてみせることが多くなりました。しか
しながら、その実験 デザインは杜撰なものが多く、とってつけたような結果を
出して満足しているのが実 情ではないでしょうか。それよりは、その情報の根
拠となる科学者の実験を説明する 方がよっぽど信頼性があるのではないかと思
うのですが。
-------------------------------------------------------------
いくつか番組内の実験デザインで問題と思われる例を挙げてみました。

1)サンプル数が少なすぎる。
 人の健康や病気に関して実験する場合、個人差がかなりあるためになるべく人
数を増やして、その結果が普遍的なものであることを示す必要があります。片手
間に数人のボランティアを集めて実験してみても、かえって個人差の方が大きく、
思い通りの結果がでないことが多いものです。かえって、予想通りの結果がでて
いるようなとき、私はヤラセがあるのではないかと勘ぐってしまいます。
何人かのボランティアに実験に参加してもらい、予想通りの結果が出たものだけ
放映し、都合の悪い結果の出た人たちは放映しなければよいわけですから。
健康番組に限らず、多くの番組でヤラセの問題は常につきまとうものです。

2)対照がない。
 人や動物に何らかの治療や処置をした場合、必ずいろいろな因子がその結果に
影響します。中でも結果に与える問題として、プラシーボ効果と時間経過があげ
られます。他のところでもプラシーボ効果ついて解説しましたが、このためにい
かにも効果の出たような印象を与えることがあります。また、物事は時間経過に
て徐々に変化するものです。対照がなければこれらの変化が単に時間がたったた
めなのか、そうでないのかを区別することはできません。ある健康食品と与えて
よくなったからと言って、その健康食品の効果であるとは言い切れません。
これらの因子を除外するためには、対照をもうけて、見た目には同じ様な健康
食品と与え(実際には何の効果もないもの)、実際の健康食品を与えた場合と
比較する必要があるのです。

3)客観的な指標を用いていない。
  あらかじめ、なにを評価するかについて決められていない。
 その民間療法や健康食品などの効果を評価するためには、誰にでも納得できる
客観的な指標が必要です。何となく良くなったとか、元気になったなどというき
わめて主観的な指標では、きちんとした効果判定はできません。しかも、どんな
効果ついて判定するのかをあらかじめ決めておかないと、何でもありになってし
まいます。人の症 状や状態は時々刻々と変化しています。単なる時間の経過で
もいろいろなことが起こるわけです。ある人はたまたま便秘が良くなることもあ
るでしょうし、腰痛が改善することもあるでしょうし、風邪が治ることもあるで
しょう。判定基準をあらかじめ決めておかなければ、これらの変化すべてそのと
きにとった健康食品のせいにされてし まいます。
-------------------------------------------------------------
○きちんとしたデータに基づいた情報か?

 薬品として認められる場合は、その前に二重盲検法という臨床試験をして、有
効性 が認められなければなりません。薬の効果があるかどうかは、本物の薬と、
見た目は本物と区別のつかない薬効がない偽の薬(偽薬あるいはプラセボ、プラ
シーボといい ます。)を患者さんに投与し、両者の効果を比較することにより
判定します。

 二重盲検法では、実際に薬を投与する医師もその薬が本物であるか偽薬かは
知らさ れていないのです。従って、投与する医師の意志はこの試験では全く
反映されないため、その薬の薬効について公正な判断ができるわけです。
なぜなら、たとえば軽い病 気の患者さんにだけ本物の薬を与え、重症の患者さ
んに偽薬を与えれば、きっとその薬は効果的であったという結果になるでしょう
し、その逆をすれば、効く薬も効かないという結果になってしまいます。投与す
る医師も知らず,しかも誰に本当の薬を投薬し,誰に偽薬を与えるかは第三者
が無作為に割り付ける必要があります。

 なぜ、偽薬と比較しなければならないか?皆さんは、ただ薬を投与してよく
なったかどうかを調べるだけでよいではないか、と思うかもしれません。しか
し、実は、偽 薬でも効いてしまうことがあるのです。これをプラセボ(プラシ
ーボ効果)といいま す。とくに、自覚症状を目安に効果を判定する場合は、偽
薬でも「効いた」と判定さ れることが多いようです。先日も、製薬会社の方が、
「この薬は効きます」とデータ を見せてくださったのですが、確かにその薬は
約76.7%の患者さんで「効果あり」と 判定されましたが、な、なんと、偽薬で
も60.0%の患者さんで効いたと判定されてしまいました!!このことから、ち
またにあふれる多くの健康法、健康食品、健康器具 で病気が良くなったといっ
ても、二重盲検法で検証していない限り、単なるプラセボ 効果である可能性が
大です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○基本健診結果の活用

 毎年この時期には各自治体で、基本健診が行われていると思います。
 40歳以上の方で、事業所での健診を受けることが出来ない方が対象で、主
に自営業や高齢者の健診で、「成人病健診・基本健康診査」とも言われてい
ます。
 健診の主な目的は、病気の早期発見と早期治療でしたが、最近は、生活習
慣病などの病気を未然に防ぐ予防的な役割も重要視されています。現在異常
がなくても、将来どの様な病気にかかる危険性があるかを予測し、原因とな
る食事や運動などの生活習慣を変えることによって、様々な病気を予防する
ことを目的としているのです。

そこで今回は「健診結果の見方」を中心に説明します。
----------------------------------------------------------
 その前に「健診」と「検診」のちがいとは

「健診」は  健康であることの確認や、今のところ何の症状もないけれども検
査値から病気につながる可能性を見つけるために行います。人間ドックがそ
の例ですし、基本健診もこの「健診」になります。
一方「検診」は何か特定の病気を見つけるために行います。「がん検診」が
その例です。
---------------------------------------------------------
○「正常値」と「異常値」

 「正常値」「異常値」というのはどういうことなのでしょう。臨床検査で
は、たくさんの健康人を調べた場合に、そのうちの95%の人が示す一定範囲
内の値を正常値(基準値)と決めています。具体的に言えば、ある血液成分
を測定し横軸に測定値、縦軸に分布頻度をプロットすると釣り鐘状の分布
(正規分布)となります。その平均値±2x標準偏差を正常範囲としている
のです。
 つまり、この数値はあくまで正常と考えられる人の統計的な数値にすぎま
せん。正常値というより基準値と呼ぶことが多くなっています。
 また基準値が施設によって異なっている事、正常群と異常群は明確に分か
れているものではなくオーバーラップしている事が多く、従って本来正常人
の幾らかが異常群に入り、異常を持つ人々が正常群に入ってしまう矛盾も抱
えています。
 しかしこの数値によって臨床の現場では病気の診断や重症度の判定などを
行っており、経験的に異常値は「病気やその重症度」と結びついていますの
で、異常値はやはり異常の確率が高いと認識しなくてはなりません。
----------------------------------------------------------
○正常値はあくまでも目安

 基準値から外れても健康な人はいるのです。病気かどうかの診断は、医師
が総合的に判断して行います。1回の検査値が基準値から外れたからといっ
てそれだけで病気であると決まるわけではないという事も知っておきましょ
う。例えば、男女でも基準値はちがいますし、同じ人でも食事の前後や時刻、
季節などによっても検査値は違ってくるのです。
 ただ健康な体ではその変動範囲は狭く、正常範囲を大きく超えることは少
ないのです。しかし逆に、正常範囲を超えていても健康な場合もあるし、正
常範囲内でもその人が健康な時の値よりは病的と判断される場合もあります
ので検査結果に一喜一憂しないことも必要です。
「正常値」は「正常/異常」を判断する物差しではなく、あくまでも目安だ
と考えてください。また、健康診断などの検査データは保存しておき、自分
の健康時の値を知っておくことも大切です。異常があった時にすぐに対応で
ききます。
---------------------------------------------------------
○判定結果に使われる用語

 検査報告書には各検査項目毎に判定され、全体での総合判定もあります。

『定期健診』
 これは、今回の健診判定は「異常なし」という判定です。異常なしの言葉
 を使わないのは、健診を過信しないようにとの配慮でしょうか。今年は異
 常ありませんが、定期健診を毎年受けて下さいという意味だと思います。

『要指導』
 すぐに治療を開始するほどの異常ではありませんが、日常生活の注意や、
 定期的な検査は必要であるという判定です。自治体の担当者の指導など
 も計画されています。

『要治療』
 検査結果に異常が見られ、明らかに病気と考えられるので医療機関で治療
 が必要である・または治療中の方は治療の継続が必要であると言う判定で
 す
     --------------------------------
 基本健診の判定はこの3つの区分だけですが、一般の健診や人間ドックなど
では「要再検」「要精査」などの区分も使われます。

『要再検』
 再検査を必要とする。検査結果が基準値を外れているか、異常の疑いがあ
 る場合にもう一度再検査が必要であるという事です。再検査の結果異常な
 しと言うことも多いので是非再検査を行ってください。

『要精検』
 通常の検査では異常の状況が明確にならない場合、もっと別の検査を行っ
 たり詳しい検査が必要であると言うことです。医療機関での検査が必要に
 なります。
-------------------------------------------------------------
○基本健診での項目別判定結果

 この判定基準値は国の指針「基本健康診査結果における判定基準と総合指導
区分」によりました。従って各自治体の基準値とは少し異なる場合もあります
のでご注意ください。

【体重】
 肥満の指標として最近はBMI(Body Mass Index)と言う指標が使われます。
BMIは国際的によく使われる体格指数ですし身長と体重から自分で計算でき
ます。

 BMl=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m) 
 このBMIも判定基準は色々提唱されていますが25以上を肥満とする判定が
 一般的です
 ----------------------------------------------
  BMI   痩せ    正常域    肥満
   判定 18.5以下  18.5-25.0  25以上   
 ----------------------------------------------
 例 身長165・・体重65kgなら
   BMI=65÷1.65÷1.65=23.8で、肥満傾向あるが正常域ということです。

 BMI 25以上で、肥満といわれた場合、問題になるのは体脂肪です。適度な
体脂肪はからだを正常に保つために必要ですが、余計な体脂肪はからだに負担
をもたらします。
 また、体重は標準でも体脂肪の割合が多い人は「かくれ肥満」と言われ、外
見上はやせていても、肥満の可能性があります。BMIでは、「かくれ肥満」の
人が「正常域」と判定されてしまう可能性がありますが、最近は手軽に体脂肪
率が測定できる体重計や測定器がありますので、自分の体脂肪率を知ることも
必要でしょう。
-------------------------------------------------------------
【血圧】
 血圧とは心臓のポンプ作用により、血液が全身に送り出されるとき、血管に
かかる圧力が血圧です。心臓が収縮して、血液が大動脈に送り出される時の血
圧値を収縮期血圧(最大血圧)といいます。また心臓と大動脈の間の弁が閉じて、
心臓が拡張するときは心臓から送り出される血液の流れが止まり、血圧は最小
となります。これが拡張期血圧(最小血圧)です。

 動脈の壁は健康であれば丈夫なので、収縮期血圧200mmHgでも耐えられま
す。しかし問題は、血圧の高い状態が続くことです。動脈硬化をはじめ、脳や
心臓、腎臓などに悪影響を及ぼし、生命が危険になることも少なくありません。
 健康な人でも年齢とともに、動脈の壁は弾力を失い、硬くなっていきます。
さらに血管の内膜または内膜下組織に、コレステロールやカルシウムがたまっ
て血管の内腔が狭くなり、血液がスムーズに流れなくなる状態を動脈硬化とい
います。動脈硬化が進むと、血管にかかる血圧はもちろん高くなります。動脈
硬化と高血圧の相乗効果で、突然、心筋梗塞や脳梗塞が起きる危険があります。

 血圧の基準値  
   mmHg  正常域   要指導(a)        要指導 (b)  要医療
--------------------------------------------------
   最大   129以下  130-139  140-159  160以上
--------------------------------------------------
   最小    84以下  85-89    90-99   100以上
--------------------------------------------------

 血圧の値は、1999年2月に世界保健機関(WHO)と国際高血圧学会(ISH)によ
り、新しい高血圧の定義が発表され、高血圧と診断する基準の血圧値が以前の
値より低く設定され、また高血圧の治療目標の血圧値も低く設定されました。
 しかし、高齢者の場合の判定は全身の状態をみて総合診断する必要がありま
す。
----------------------------------------------------------
【高脂血症】
 高脂血症とは血液中の脂肪分、つまりコレステロールや中性脂肪が高い状態
です。どちらもからだに必要なエネルギー源ですが、たまりすぎると動脈硬化
を引き起こし、高血圧や心筋梗塞の原因となります。
 コレステロールは細胞をつくる成分として、またホルモンやビタミンDなど
の原料として大切な役割を果たす脂肪の一種です。そのコレステロールには血
管にたまって動脈硬化を促進する悪玉(LDL)コレステロールと、その悪玉を
血管壁から肝臓に運び去る善玉(HDL)コレステロールがあります。

   mg/dl    正常域   要指導(a)        要指導 (b)  要医療
-- --------------------------------------------------------
 総コレステロール 150-199  200-219  220-239   240以上
  ※       150-219  220-239  240-259   260以上
 ----------------------------------------------------------
 HDLコレステロール 40以上   35-39    34以下   34以下
 ----------------------------------------------------------
 中性脂肪      149以下     150-299      300以上
 ---------------------------------------------------------- 
    ※ 50歳以上の女性ではこの数値を適用する

過去には総コレステロール値は220以下となっていた事もあります。虚血性心
疾患を持った男性患者さんではコレステロールはもっと低くコントロールする
必要がありますが、220や240で区切ると中年以降の女性の多くが要医療にな
ってしまうため、50歳以上の女性の正常値は高めに設定されました。
-------------------------------------------------------------
【血糖】
 血糖値が高いから、すぐに糖尿病というのではありません。糖尿病はからだ
に入ってきた糖分が、すい臓にあるインスリンというホルモンで分解・利用し
きれなくなって発症します。ほとんど自覚症状もなく、症状が現れたとさには
すでに進行している事の多い怖い病気です。特に三大合併症といわれる、糖尿
病による網膜症、腎症、神経障害は、失明や尿毒症、手足のしびれなどの症状
を起こします。

     mg/dl        正常域   要指導   要医療
 -- ----------------------------------------------
   血糖 空腹時        109以下   110-125  126以上
   血糖 随時         139以下   140-199  200以上
  -------------------------------------------------
   ヘモグロビンA1C  % 5.4以下   5.0-6.0   6.1以上
 -------------------------------------------------
   検尿 尿糖      -、±             +以上
   -------------------------------------------------

※ 血糖値は食事によって大きく変動しますので空腹時と食後では判定が異な
ります。そこで空腹なのか食後なのかを採血の時に伝えておく必要があります。
また、そのために食事の影響の少ないヘモグロビンA1Cと言う検査も同時に行
われています。
 ヘモグロビンA1C(HbA1C)はブドウ糖とヘモグロビンが結合したもので、血
糖値と異なり食事の影響を受けず、1-2ヶ月の血糖のコントロールを表します
ので、血糖値より糖尿病のコントロールの診断には必要な検査です。
------------------------------------------------------------
【貧血】
 赤血球の大部分はヘモグロビンという鉄を主成分とする物質でできています。
ヘモグロビンはからだの細胞や組織のガス交換をしています。貧血とはヘモグ
ロビンが減少して、体内が酸欠状態になっていることです。貧血の原因として
一番多いものは鉄分の不足で鉄欠乏性貧血とよばれ女性に多く見られます。そ
のほか消化管出血や子宮筋腫なども見つかることがありますので、貧血の指摘
があった場合には詳しい検査を受けてください。
 また血液検査では時に貧血の逆の多血症が発見される場合もあります。

               正常域    要指導   要医療
 -- ----------------------------------------------
   赤血球 男        410-530  401-409  400以下
       女        380-480  351-379  350以上
  -------------------------------------------------
   血色素 男    13.0-17.0  12.0-12.9  11.9以下
     g/dl 女    11.0-15.0  10.0-10.9  9.9以下
  -------------------------------------------------
   ヘマトクリット 男 40.0-50.0 36.0-39.9  35.9以下
    %       女 35.0-45.0 32.0-34.9  31.9以下
  -------------------------------------------------

 貧血の判定結果で要医療の判定が、赤血球などは少し厳しい感じはしていま
すが、国の決めた判定基準ですので、これに従って判定します。ただしこの3項
目の総合判定と言うことになります。
------------------------------------------------------------
【肝機能】
 肝臓はたんばく質の合成や糖分、有害物質の解毒・分解など重要な働きをする
臓器です。再生・代償能力を備えた丈夫な臓器でもあり、病気になっても症状が
現れにくく、「沈然の臓器」といわれるくらいです。
 お酒は「百薬の長」というように、適度に飲めば心身のリラックスや食欲の増
進などに効用がありますが、飲み過ぎると中性脂肪が肝臓にたまり、脂肪肝にな
ることもあり、アルコール性肝炎、肝硬変へと進行してしまう可能性が高いので
す。アルコールの影響はγGTPの値で推測できます。
 また今年度からはじまった肝炎ウイルス検診は、肝臓病の中でも治療に難渋す
るC型慢性肝炎やB型肝炎の診断を行う検診です。これについては前号にご紹介
しました。

    IU/l        正常域   要指導   要医療
 -- ------------------------------------------
   GOT(AST)   8-40   41-50     51以上
   GPT(ALT)     5-35   36-45       46以上
  ---------------------------------------------
   γGTP    59以下   60-99   100以上  
  ---------------------------------------------

 肝炎ウイルス検診では、このうちGPT(ALT)の結果が36-45IU/lの人たち
だけ、二次検診に進んでウイルス検査を受けることになります。46以上の方は
ウイルス検査が希望なら医療機関で保険診療で受けることになっています。
-----------------------------------------------------------
【腎機能】
 腎臓は血液中の老廃物をろ過して尿とともに排泄し、血液をきれいにして体
液の成分を一定に保つ働きをします。また血圧の調整など重要な働きもします。
腎臓の病気は大半が進行するまで自覚症状がありませんので、健診結果に注目
しましょう。
 基本健診では検尿とクレアチニン検査だけが行われます。

              正常域   要指導   要医療
 -- ------------------------------------------
   クレアチニン  0.5-1.1    1.2以上
   検尿 蛋白      -、±     +以上
      潜血      -、±     +以上
  ---------------------------------------------
------------------------------------------------------------
○判定時の注意と過去の健診との違い

 判定結果で異常のない場合「定期健診」という判定区分になりますが、はここ
では説明上「正常域」としました。

 血圧値やコレステロールなどで「要指導」をさらに(a),(b)の2区分にわけて
いますが、(b)に該当する場合にはより厳密な指導が望まれ、指導により検査
値の改善が見られない場合には再度医師の判定で「要医療」にするとなってい
ます。
 以前の健診に比べて、血圧値がかなり引き下げられたこと、コレステロール
値は特に女性では正常域値が引き上げられたことが大きな変化だと思います。

 総合判定で「定期健診」=「異常なし」とされたときは、今回行われた検査
では異常が見つかりませんでしたと言うことですが、油断は禁物です。検査は
完全なものではありません。
 また「要医療」になったとしても、病気であるかどうかは、すぐに治療が
必要かどうかは、検査値だけでなく症状なども含めて総合的に医師が診断しま
すので、落ち込んだりしないで、精密検査をすすめられたらこの検査結果を
かかりつけ医に相談してください。心配のし過ぎはかえって身体によくありま
せん。

 その他、基本健診では心電図検査・眼底検査なども行われることがあります
が、この結果はそれぞれ結果の指示に従ってください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【発行】「かかりつけ医通信」発行委員会
 当委員会は、趣旨に賛同した医師による、自発的な会です。
 他の既存の団体や会社に所属しているものではありません。
【編集】
(委員長)長島公之:長島整形外科(栃木県) 整形外科医
      http://www.t-cnet.or.jp/~kotui/
(委 員)
 安藤潔:荒川医院(東京都) 内科医
  http://www2u.biglobe.ne.jp/~andoh/
 本田忠:本田整形外科クリニック(青森県) 整外外科医
  http://www.orth.or.jp/
 吉岡春紀:玖珂中央病院(山口県) 内科医
  http://www.urban.ne.jp/home/kugahosp/index.html
 吉村研:吉村内科(和歌山県) 内科医
  http://www.nnc.or.jp/~ken
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━