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 かかりつけ医通信     第24号   2002年3月14日発行
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    健康・医療のお役立ち情報・・・医療の現場から
 私達は、医療の現場で働く臨床医です。実際の診療やネット上から
 得た健康と医療の役に立つ情報を、市民の皆さんにお届けします。

▼目次▼
1) 花粉症について 続き
   眼科医と内科医からの情報
2) 「困った患者さん」

前回花粉症の総論的なまとめを耳鼻科の川島先生に書いていただきましたが
花粉症はそのほか眼科や内科を訪れることがありますので、眼科の専門医にも
追加のご意見を書いていただきました。
そのほか内科医としては花粉症の疫学的な報告がありましたので紹介します。
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1) 花粉症について
「眼科医から一言」 ハマダ眼科 濱田恒一先生からいただきました。
           tshamada@eye.or.jp
          http://www.eye.or.jp

眼科医である私は、30年来花粉症に悩まされております。
この時期、からだがほかほかと熱っぽくなりますが、余りいやな感じではありま
せん。体温が上がり、頭の回転が速くなっているのではないかとさえ思えます。
ただ、晴天で花粉がたくさん飛んでいそうな日は、テニスの時間を短くしなけれ
ばならないのが、苦痛といえば苦痛です。鼻汁、涙、眼の掻痒感、体の熱っぽさ
までは許容できるのですが、長時間外気を浴びると(花粉を浴びると)、手先、
足先の冷えまで感じるようになります。初めは何でこんなに足先が冷えるのかな
と思っていたのですが、花粉症の症状の一つに数えられており、さすがにここま
で症状が出るようでは、テニスも自重しなければならないという結論になります。

眼の症状は、痒みを訴える患者さんもありますが、異物感を訴える患者さんもあ
ります。流涙を主な訴えとして来院される患者さんもありますし、瞼の腫れを訴
えて来院されるかたもあります。私もこの時期、涙がぽろぽろ出てきます。涙を
拭いていると、そのうち瞼が腫れてきます。

治療ですが、細菌性結膜炎、ウイルス性結膜炎も似たような症状を呈する場合が
ありますので、症状が出てきた場合は眼科医を受診することをお薦めします。
原因を確認しておくことが、第一歩です。次に原因が花粉であれば、花粉を遠ざ
けることです。特に花粉症用の眼鏡でない普通の眼鏡でも一定の効果があるとさ
れています。空気清浄機は有効で、空気清浄機の置かれている私の診療所の室内
では、私は症状がほとんどでません。
次に眼を触らないことです。触ると症状が悪化します。触る代わりに冷やしてや
るとマストセルが安定し血管が収縮して症状が軽くなります。
眼からアレルゲンを洗い落とすため、よく洗浄することも大切です。外出先から
帰宅すればまず顔を洗います。のどの洗浄のためのうがいも忘れてはいけません。
私の診療所では患者さんに頻回に点眼できる生理的食塩水を洗浄用として処方し
ています。

点眼薬としてはまず化学伝達物質遊離抑制剤(抗アレルギー薬)点眼液を処方し
ます。これで効果のない時に、抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー点眼液を
処方します。抗ヒスタミン作用のある点眼液は、時として眠気を誘うこともあり
ますし、眼瞼に接触性皮膚炎を起こすこともあります。症状の強いときには一時
的にステロイドの点眼液を使うこともあります。眼瞼の掻痒感の強い患者さんに
は短期間に限ってステロイドの眼軟膏を処方することもあります。
経口抗ヒスタミン剤は、眼の症状に効く場合もありますが、涙の分泌を低下させ
眼の症状を悪化させることもあります。
点眼液に含まれる防腐剤である塩化ベンザルコニウムに反応してアレルギー症状
を呈する患者さんもありますので、治療に抵抗するアレルギー性結膜炎の場合、
一時的に防腐剤の入っていない化学伝達物質遊離抑制剤(抗アレルギー薬)点眼
液に切り替えてみることもあります。

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○「内科医から一言」

私も25年以上春先にはスギ花粉症で悩まされ続けて来ました。
この時期「杉山さん、杉本さん、杉下さん」等の名前を聞くだけで、くしゃみや
鼻水・目のかゆみがでてくるのでです。
まあ そんな事はありませんが「スギ」と聞くだけでもいやな時期です。
いろいろな治療法や予防法も試しました。それなりに効果はあるのですが喉がから
からになったり、昼間から眠たくなったりでこの時期はいやな時期でした。
個人的には7-8年前にステロイドの入った点鼻薬の噴霧(朝・夕2回)でほぼ鼻の症状
は無くなり、抗アレルギー剤の点眼の併用で昔に比べたらウソのような季節を過ご
しています。この点鼻薬は私の外来では多くの方に喜んでいただいています。
リノコートというカプセルを専用の器具で吸い込みながら鼻腔に噴霧するものです。
刺激もなくほとんどいやな副作用はありません。私にはこれが一番あっています。
皆さんも自分にあった治療法を見つけて、不快な時期を出来るだけ快適に過ごした
いものです。

今回はスギ花粉症の疫学的取り組みや予防についてご紹介したいと思います。
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○花粉症の患者さんはどれくらいいるのか

 花粉症の種類や発症状況は各地方の植物の種類や花粉の数によって異なります。
スギ花粉症は北海道や沖縄ではほとんど見られないといわれており、患者動向は
花粉飛散とおおよそ一致しています。全体的には花粉症患者の実数についてはまだ
なお検討の余地が残っていますが国民の10%を超えるといわれていました。

 この数字が正しいかどうか最近スギ花粉症の疫学調査が続けて発表されました。
それによると全国的にはもっとたくさんの患者さんがいると予測されます。

一つはネット調査会社「マクロミル」(本社・東京都渋谷区)が全国の男女に実施し
た花粉症調査によると、「全体の3分の1が「花粉症である」と自覚していることが
わかった。」との事です。
「調査は2月28日〜3月2日に3233人に対して実施。花粉症であると回答した人は
33.0%で、「疑わしい症状があるが正確にはわからない」の19.4%と合わせると、
花粉症かそれらしき症状を経験している人が過半数を上回っている。」と報告してい
ます。(毎日新聞)[3月6日]

またもう一つの最近の報告です。
 日本アレルギー協会会長奥田稔先生らの全国疫学調査では「スギ花粉症の有病率は
13.5%前後」であることが明らかになりました。このような信頼性の高い大規模な
疫学調査は初めてのことで有病率13.5%は補正を加えた推計で、統計学的な疫学解析
では「有病率19.2%」という結果が得られていました。
 これまでの「有病率10%」を超える数字で全国で13.5%と言うことは凄い数字で、
毎年この時期には1600万人以上がスギ花粉に悩まされていることになりますし、その
治療に係る医療費や予防などの関連費用は莫大なものになると思います。

「この調査は昨年の4〜7月にかけて行われたもので、全国の約4000の市区町村から
390地点を選び、住民基本台帳から3〜79歳の1万920人を無作為抽出して、郵送で
アンケート調査する方法で行われました。
 地域的には関東・東海・近畿で高い有病率といわれており、北海道・沖縄の有病
率は低く、北海道では5.1%、沖縄では2.8%と言う結果でした。それまで北海道では
スギ花粉症はないと考えられていたようですが、全国で各地で発生していることも
確認されました。」
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○患者の約60%は医療機関を受診

 この調査では花粉症者がどのような症状で、どのくらい困っているかについても
調べられ、その解析によると、花粉症者の約6割は「生活に支障がある」と回答し
ており、医療機関への受診も約6割に達しています。
 また、「薬の服用に関しては54%が処方薬を、42%が市販の一般薬を服用してお
り、処方薬と一般薬の両方を服用しているケースもみられている。」とのことです。

 症状としては、眼症状単独は1%と少なく、ほとんどは目と鼻症状が合併している
という結果だったようです。そのなかで、眼よりも鼻症状の方が辛いという回答が
86%に達しており、これまで、眼科領域や耳鼻科領域など、臨床統計を取る診療科
によって、どのような症状が強いのかについてはバラツキがみられていたが、全国的
にみると鼻症状が患者の生活に影響を与えているという結果でした。
 また、12ブロックに分けて花粉飛散量を調べ、有病率との相関を調べたところで
は、飛散量が多い地域では患者の発生、有病率も高いことが明らかになっています。
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○スギの花粉を減らすために

 花粉症についての対策は森林・林業面からも進んでいます。
 スギ林の分布状況、雄花の着いている状況など、花粉についての調査を行い、色々な
ことが分かってきました。
 一例として、雄花の数は、雄花の「もと」の作られる時期である前年の7月の気象
条件と統計学的に関連性が高いことが分かりました。また、山を育てる事業の一環と
して、間伐などを実行する場合には、雄花の多く着いているものを優先するように森
林所有者の方々に協力していただいています。
 この他、雄花の少ないスギを選抜し、花粉の少ないスギの苗木を育成・供給する事
業を実施しています。

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○どのような研究をしているか(研究体制)
  環境省環境保健部 花粉症保健指導マニュアル
   http://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/

 花粉症の病態の解明や治療法の開発、スギ花粉の量の減少、飛散状況の調査などに
ついて各省庁が研究成果や情報を交換するなど、互いに協力しながら担当分野につい
てより良い研究成果を挙げることを目指して研究を進めております。

−国における具体的な調査研究状況(平成12年度)−
 文部科学省
    スギ花粉症克服に向けた総合研究
     ○スギ花粉の治療に関する研究
     ○スギ花粉症の予防に関する研究
     ○スギ花粉暴露回避に関する研究
    科学研究補助金大学等における基礎研究
 環境省
    大気汚染物質が健康に及ぼす影響に関する総合的研究
     ○花粉と大気汚染物質の相互作用に関する基礎的動物実験
     ○花粉症と大気汚染物質に関する疫学的調査研究
 林野庁
    1.花粉の少ないスギ品種の選定・供給体制の整備
    2.花粉生産量予測手法に関する調査
    3.スギ花粉生産の抑制に資する間伐、枝打の実施
 厚生労働省
    免疫・アレルギー等研究
     ○花粉症に対する各種治療法に関する科学的根拠を踏まえた評価研究

こんなに多くの省庁で独自の研究や調査が行われているのです。
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○編集者より一言

スギ花粉の予防や医療費を削減する確実な方法
「日本からすべてのスギを伐採してなくしてしまうこと」です。
半分冗談ですが半分本気で考えています。

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2) 「困った患者さん」

「マスコミやネット上では、「患者側からの医者への批判」は多いが、「医者から
の患者批判」は、滅多にありません。しかし、現実には、困った医者と同じ程度に
は、困った患者もいるはずです。逆説的な意味での「医者の上手なかかり方」にな
るようにしたいので、困った患者の内容だけでなく、なぜ困るのか、どうして欲し
いか、なども、できれば教えて下さい。」
かかりつけ医通信編集部では医療関係者メーリングリストでこんな内容の調査を
行いました。いろんな意見が寄せられましたので、ご参考に。
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内科医
1)私は多少のことは我慢しておりますが、我慢できない患者さんは、いろいろ話
を聞いた後、治療の方針を提示して薬に関してお話して行く過程で結局、検査もし
ない、薬も飲みたくない、そして最後には検査も治療も受けない患者さんです。
 要するに医療を信じていない猜疑心のある患者さん。
 そのような方は性格的に多少ゆがみ、欠陥、社会適応性が欠ける方が多く、自分
の性格が病気を作っており、自爆の道しか歩まず、医師の救いの手、医療者の愛情
のある救いの手も払いのける患者さんです。
 結局、今のは何のために病院へ来られたんだろうと思いたくなるような方
2)血圧が高くてもそれを認めたがらない患者さん。
 そのような患者さんは高い血圧を教えて上げると「今日は先ほどまで何々していた
から」とか「夕べは睡眠不足だったから」とこちらが聞きもしない言い訳を話し始め
る患者さん。
 ときには「先生に計ってもらうときは高い」という患者さん。
 (もちろんそれは多少あることは知っておりますが)。
3)肥満、糖尿の患者さんに食事指導をしても何も食べていない、と言い張る患者
 さん。
 ???ジャーなんで太ってるの?と聞きたくなります。
4)慢性疾患で診察を嫌がる患者さん。
5)保険証の提出がルーズな患者さん。提示を求めると不快がる患者さん。
6)少し待たされただけで怒り出す患者さん。
 この手の患者さんは30分待っても「一時間待たされたと」騒ぎます。
7)待ち時間を節約するためにわざと終了時間直前、あるいは直後に受診にくる
 患者さん。
8)いつも時間外が常習で、どう考えても受診より自分の都合を優先させている
 患者さん。
 この患者さんの中には2から3日前から症状がある人が多くおられます。

これだけ書いたら少しすっきりしました。
ありがとうございます。
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整形外科医院

 困った患者さんはたくさんいます。挙げたら限がありませんが、これだけは
何とかしていただきたいことを書きます。
 学校の先生が勤務時間中に怪我をしたといって来院されます。
 受傷原因もはっきりと言い、受傷時間もわかっているので公務災害扱いで治療
しますと、数日後に健康保険でやってもらえないかと言ってきます。もちろんで
きないと拒否しますと、校長先生が来院し、患者である先生の勘違いであったの
で、公務災害は取り消します、などと言って来ます。痴呆症ではあるまいに、勘
違いとは笑わせます。
 とにかく法律を守らない患者さんは困ります。
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整形外科医

・家族や近所の人との間で、薬や湿布をあげたりもらったりしている患者
  人によっては、かえって害になる薬もあるので、やめてほしい
・初診時に、以前の医療機関でもらっていた薬の処方だけを希望する患者。
 中には、診察はしなくていいという人も。
  その薬で良いかどうかは、診察してみないとわからない。
・薬の副作用の可能性について説明し、こういう症状が出たらやめてくださいと
 いうと、その時は何も言わないが、実は、恐がって飲んでいない。
  説明のときに言ってくれれば、それなりに対処するのだが。
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内科医
 後で保険証を持ってくると言いつつ、最初から踏み倒すつもりだったとしか
思えないような患者さんですね。
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内科医
このご時世だから携帯電話が着信するくらいではなんとも思いませんが、狭い
待合室で大声で電話する方や、まれに診察を中断して話し続ける方がおられる
のは「困る」のを通り越してあきれます。
病院だけではなく一般社会でも同様なのでしょうが。
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整形外科医
労災、公務災害を嫌がる傾向はよくありますね。
当院では業務中(通勤も含む)の怪我では「健康保険は使えません」でとうし
ます。労災でなければ自費診療にします

財政ひっぱくのおり規則は規則できちんと守ってもらわなければますます財政を
圧迫する。保険料未払い問題でも保険料を平気で未納のままにさせてお金がないと
言われては納得出来ません
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耳鼻科医
 ● 現在飲んでいる薬は必ず持参し、他の病院などで治療中の場合も必ず話し
   て下さい。
 持ってこない人多いです。
 薬の飲み合わせを心配するなら、普段飲んでいる薬ぐらい持ってきてほしい

   ● 付き添いの方は、診察の邪魔にならないようにして下さい。
 患者さんに聞いているのに、横から口を出してくる人(ほとんどが奥さん)
 話が聞き終わって、患者さんが言い残したことがあれば、付け足してもらえば十分。
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医者にかかる10箇条
http://www.coml.gr.jp/10kajyo/index.html

あなたが"いのちの主人公・からだの責任者"
1. 伝えたいことはメモして準備
2. 対話の始まりはあいさつから
3. よりよい関係づくりはあなたにも責任が
4. 自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報
5. これからの見通しを聞きましょう
6. その後の変化も伝える努力を
7. 大事なことはメモをとって確認
8. 納得できないときは何度でも質問を
9. 医療にも不確実なことや限界がある
10. 治療方法を決めるのはあなたです

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【WEB】   http://homepage1.nifty.com/hone2/kakari/
  ご意見・ご感想等ございましたら、以下のメールアドレスへ
【MAIL】   nagashi@t-cnet.or.jp
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 最近、読者の皆様から編集部宛にいろんなメールをいただいております。皆
様からのご意見も参考にして、メルマガ「かかりつけ医通信」の紙面づくりに
生かして行きたいと考えておりますので、どうぞご意見をお寄せ下さい。また
皆様から寄せられたメールも、出来るだけ紙面でご紹介していきたいと考えて
おりますので、事前の承諾なしにメルマガに掲載させていただく場合がござい
ます事をご了解下さい。匿名などのご希望や、掲載を望まれない場合には、そ
の旨御明記願います。
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【発行】「かかりつけ医通信」発行委員会
 当委員会は、趣旨に賛同した医師による、自発的な会です。
 他の既存の団体や会社に所属しているものではありません。
【編集】
(委員長)長島公之:長島整形外科(栃木県) 整形外科医
      http://www.t-cnet.or.jp/~kotui/
(委 員)
 安藤潔:荒川医院(東京都) 内科医
  http://www2u.biglobe.ne.jp/~andoh/
 本田忠:本田整形外科クリニック(青森県) 整外外科医
  http://www.orth.or.jp/
 吉岡春紀:玖珂中央病院(山口県) 内科医
  http://www.urban.ne.jp/home/kugahosp/index.html
 吉村研:吉村内科(和歌山県) 内科医
  http://www.nnc.or.jp/~ken
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