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 かかりつけ医通信     第22号   2002年2月27日発行
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    健康・医療のお役立ち情報・・・医療の現場から
 私達は、医療の現場で働く臨床医です。実際の診療やネット上から
 得た健康と医療の役に立つ情報を、市民の皆さんにお届けします。

▼目次▼
1) 入浴中の突然死について
2) 医療費控除について

今回は冬場に多い入浴中の突然死と、確定申告の時期ですので医療費控除を
取り上げてみました。
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1)入浴中の突然死について

○入浴死の現実
日本人は入浴好きの国民と言われており、湯船で首まで浸かる入浴法は欧米
の入浴とは異なっています。厚生労働省がまとめた人口動態統計によると、
99年の入浴中の水死者数は3345人でそのうち65歳以上が83%を占め、
最近10年間でも入浴死は年々増加しています。東京消防庁の推計では、脱衣室
などで倒れて亡くなる例も含めると全国で年に1万3000人から1万5000人
が入浴中に急死していると見ており、交通事故死を凌ぐ死亡者数で、見過ごす
ことは出来ない数字だと考えます。
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○入浴死(浴槽内での死亡)について、
欧米と日本との家庭内における入浴死者の数を比較してみると、日本の場合、
とくに75 歳以上の後期高齢者の数が突出していると言われています。これは
明らかに、住宅内の温熱環境とお風呂の湯温が関係することを示しています。
一方国内でも入浴死には地域差があり人口10万人中の発生率を都道府県別に
比較したデータでは、最も高い新潟で5.8人、最も低い沖縄で0.08人と危険率
の差は72.5倍にもなるそうです。1月でも平均気温が16℃という沖縄に対して、
福井、富山、山形など冬の寒さが厳しい地域でおおむね発生率が高くなってい
ます。一方、全館暖房が普及している北海道では、冬の寒さ(1月の平均気温
は-4.6℃)にもかかわらず、発生率は1.39人/10万人(平成10年)と低く、
47都道府県中低い発生率のベスト10に入っているようです。

東京ガス都市生活研究所の浴槽内の溺死都道府県別比較
http://www.tg-showroom.com/ondo/html/data2_3.html
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○入浴死の危険因子
これらの事実から、高齢者の冬場の入浴について危険因子が浮かんできます。
 入浴死の時期   12月から3月までの冬場に多いこと
 外気温と逆相関  時期と一緒ですが、外気温が下がると発生が多い事実
 脱衣室と浴室の温度差  住居の構造にも関連しますが室内の温度差
 高齢者とくに心血管系の動脈硬化  やはり高齢者が多い事実

○入浴死の原因
以前から入浴死の主因は心筋梗塞と脳卒中の心血管系事故が考えられていまし
たし、東京監察医務院のデータでも、入浴死の原因は1.心筋梗塞55%、2.脳卒中
18%、と報告されていますが、これは検死をされた事例の統計であり、最近では
「ヒートショック」とよばれる寒暖の差による、体温上昇と血圧低下による一
時的な意識障害が引き金になっていることが多いこともわかりました。
これらの心血管系事故の発症と密接に関連しているのは血圧の上昇による血管へ
のストレスや、体温の上昇により血液がかたまりやすくなり、心臓や脳の動脈に
血栓を生じることが原因と言われています。その他一過性の脳虚血発作など意識
障害による溺死もあると思います。とくに既に動脈硬化により心臓や脳の血管が
狭くなっている場合には要注意です。
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○ヒートショック
ヒートショックとは急激な温度変化が体に及ぼす影響のことで、血圧が急変動し
たり、脈拍が早くなったりし、特に高齢者では深刻な事故につながるケースがあ
ります。
冬の入浴を例にしますと
1暖まった居間から、暖房のない脱衣室や浴室に入り、脱衣や体を洗うなど体を
 動かすと血圧が急激に上昇します。
2浴槽に入るときには熱いお湯に触れ、さらに水圧の影響で心臓の負担が大きく
 なり、血圧は上昇します。しかし、湯に浸かると温熱効果で血流がよくなり血
 圧は下降します。
3温まった体で寒い脱衣室に戻ると血圧は上昇します。
この様な血圧の変動と脈拍の変動が心血管系の事故に繋がるのです。

ヒートショックとは
http://www.osakagas.co.jp/heat-s/heat1.htm
http://www.melco.co.jp/home/kankisen/kanki/hs/b-hs.html
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○体に負担をかけない入浴法?
入浴中に事故を起こさない入浴法はあるのでしょうか。
先に述べた危険因子の解決である程度予防出来ると思います。
1.温度差の解消
 部屋と浴室、浴室と湯の温度差を少なくするには、脱衣室をあらかじめ暖房し
て温めておいたり、浴室は入浴前にフタをとって、浴槽の湯気をたてるなどの
工夫をしましょう。シャワー給湯といって、浴室のなるべく高い位置にフックを
つけて浴槽にシャワーで給湯すれば、ほどよく浴室内も温めることができます。
特に一軒家の脱衣室と浴室の場所は居間から離れていますので工夫が必要です。

2.高齢者は二番湯に入る
 「さら湯はよくない」といわれていますが、本当です。
一番湯は浴室内が温まっておらず寒いこと、また、湯温が高いために高齢者には
負担がかかります。家族が入った直後に二番湯に入れば、温まった浴室で、温度
が下がった湯に入ができるので、高齢者には身体的な負担が少なく、望ましい入
浴法といえます。といっても独居や老夫婦だけの家庭も増えていますので、事故を
起こさない注意が必要です。

その他にも心臓血管系に負担のかからない入浴方法として
 1)入浴前後にコップ一杯の水分補給。脱水の予防。
 2)風呂の温度は38℃から40℃。熱い湯に入らない工夫。
 3)入浴時間は5分から7分程度で。
 4)半身浴が心臓に負担がかからない。
 5)浴槽から急に立ち上がるのはさける。
などがあげられます。
 そして、お年寄りの入浴中には「湯加減はいかがですか」の声かけをおこない
異常の早期発見をすることも必要です。

以上を守って快適で冬場の安全な入浴を楽しみましょう。
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入浴死は意外と多い!
http://www.gik.gr.jp/~skj/lifestyle/bathing.php3
入浴中の死亡事故について
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/sa0919/f.html
入浴中の突然死について
http://www.tokyo-gas.co.jp/Press/20010125.html
冬はご用心 入浴突然死
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/kaigogaku/ka112101.htm
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○ 医療費控除とは
 医療費控除とは「あなたやあなたと生計を一にする配偶者その他の親族のために
その年中(1月1日〜12月31日)に支払った医療費の総額が所得金額の5%又は
10万円を超えた場合には、200万円を限度として医療費控除をすることができる」
制度です。
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○所得税法の中の医療費控除とは
これを法律で表せば、所得税法(第73条)では、
「居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に
係る医療費を支払った場合において、その年中に支払った当該医療費の金額(保険金、
損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)
の合計額がその居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の
合計額の100分の5に相当する金額(当該金額が10万円を超える場合には、10万円)
を超えるときは、その超える部分の金額(当該金額が200万円を超える場合には、
200万円)を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金
額から控除する。」と規定されています。
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医療費控除の概要や要件については国税局ホームページに詳しい説明がありますので
一部をご紹介します
http://www.taxanser.nta.go.jp/

○医療費と所得控除
1 医療費控除の概要
 自分自身や家族のために医療費を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受け
 ることができます。これを医療費控除といいます。
 医療費控除は、所得金額から一定の金額を差し引くもので、控除を受けた金額に
 応じた所得税が軽減されます。
2 医療費控除の対象となる医療費の要件
(1)納税者が、自分自身又は自分と生計を一にする配偶者やその他の親族のため
  に支払った医療費であること。
(2)その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費であること。

3 医療費控除の対象となる金額
 医療費控除の対象となる金額は、次の式で計算した金額(最高で200万)です。
 医療費控除の対象となる金額=
       (実際に支払った医療費の合計額−イの金額)−ロの金額

 イ 保険金などで補てんされる金額
 (例)生命保険契約などで支給される入院費給付金、健康保険などで支給される療
  養費・家族療養費・出産育児一時金など
 ロ 10万円
 (注)その年の所得金額の合計額が200万円未満の人はその5%の金額

4 控除を受けるための手続
 医療費控除に関する事項を記載した確定申告書を提出してください。その際、
医療費の支出を証明する書類、例えば領収書などについては、申告書に付けるか、
あるいは申告の際にチェックを受けてください。
また、給与所得のある方は、このほかに給与所得の源泉徴収票も付けてください。
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○医療費控除の対象となる医療費
http://www.taxanser.nta.go.jp/1122.HTM

医療費控除の対象となる医療費は、次のとおりであり、その病状や指定介護老
人福祉施設におけるサービスの提供状況に応じて一般的に支出される水準を著し
く超えない部分の金額とされています。

(1)医師又は歯科医師による診療又は治療の対価。ただし、健康診断の費用や
   医師等に対する謝礼金などは含まれません。
(2)治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価。ただし、風邪をひいた場合の
   風邪薬などの購入代金は医療費となりますが、ビタミン剤などの病気の予
   防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません。
(3)病院、診療所、介護老人保健施設、指定介護老人福祉施設又は助産所へ収
   容されるための人的役務の提供の対価。急患や怪我などで病院に運ばれる
   費用です。
(4)あん摩、マッサージ、指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師などによる
   施術の対価。ただし、疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接
   関係のないものは含まれません。
(5)保健婦、看護婦、准看護婦又は特に依頼した人による療養上の世話の対価。
   この中には、家政婦さんに病人の付添いを頼んだ場合の療養上の世話の対
   価も含まれます。ただし、所定の料金以外の心付けなどは除かれます。
   また、家族や親類縁者に付添いを頼んで付添料の名目でお金を支払っても、
   医療費控除の対象となる医療費になりません。
(6)助産婦による分べんの介助の対価。
(7)介護保険制度の下で提供された一定の居宅サービスの自己負担額。
(8)次のような費用で、医師等による診療、治療、施術又は分べんの介助を受
   けるために直接必要なもの。
   イ 医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の
     部屋代や食事代の費用、コルセットなどの医療用器具等の購入代やそ
     の賃借料で通常必要なもの。
     ただし、自家用車で通院する場合のガソリン代などは含まれません。
   ロ 医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、義手、義足、松
     葉杖、義歯などの購入費用。
   ハ 傷病によりおおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けている場
     合に、おむつを使う必要があると認められるときのおむつ代。この場
     合には、医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要です。
   (注)1 医療費控除を受けるためには、その支払を証明する領収書等を
        確定申告書に添付するか提示することが必要です。
      2 医療費の中には、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法などの
        規定により都道府県や市町村に納付する費用のうち、医師など
        の診療等の費用に相当するものや前記イ・ロの費用に相当する
        ものも含まれます。

医療費を補てんする金額とは
   健康保険組合などから支払われる高額療養費や生命保険契約などの特約に
  より支払われる入院費給付金などを受け取っている場合は、その金額を支払っ
  た医療費から差し引かなければなりません。
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○医療費控除額の記入方法
http://www.taxanser.nta.go.jp/IRYOU/H13/1-A-06.htm
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○医療費控除 Q&A
http://www.ihealth.co.jp/money/010119.html

医療費のうち、病気治療に要したものに限ります。 以下のうち、どれが医療費
控除の対象になるでしょうか? 考えてみてください。

1.医師・歯科医師に支払った診療費
2.美容整形のための手術代
3.医師・歯科医師が必要と指示した義手・義足・義歯・補聴器などの購入費用
4.どこにも異常が発見されなかった場合の人間ドックにかかった費用
5.治療のために薬局で購入した薬代
6.乳児の紙オムツ代
7.医師がそれを必要と認めた人の紙オムツ代
8.入院・通院に要した自家用車のガソリン代
9.入院・通院に要した交通機関費用
10.海外旅行に行くに際しての予防接種代
11.B型肝炎患者家族のワクチン予防接種代
12.リウマチ治療のための温泉旅行経費
13.1週間以上療養したクアハウス(温泉利用型健康増進施設)代
14.肩こり解消のために頼んだ出張マッサージ料金
15.治療の為に鍼灸師にかかった費用
16.雨の日、歯科医院への往復に利用したタクシー代
17.子供の不正咬合を治すための歯科矯正費用

正解:問題番号の奇数が対象になり、偶数は対象になりません。
いくつ出来ましたか? しっかりチェックし、「医療費控除をし損なった!」
ということが無いように!
また各税務署でも相談に応じてくれますのでご利用なさってみてはいかがですか。
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医療費控除の基礎知識
http://homepage1.nifty.com/shikari/
http://homepage1.nifty.com/shikari/data/iryou/kiso.htm

医療費控除で税金の還付を!
http://www.saveinfo.or.jp/kinyu/zeikin/zeikin09.html
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【WEB】   http://homepage1.nifty.com/hone2/kakari/
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(委 員)
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 本田忠:本田整形外科クリニック(青森県) 整外外科医
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 吉岡春紀:玖珂中央病院(山口県) 内科医
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 吉村研:吉村内科(和歌山県) 内科医
  http://www.nnc.or.jp/~ken
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