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 かかりつけ医通信     第17号   2002年1月4日発行
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    健康・医療のお役立ち情報・・・医療の現場から

あけましておめでとうございます

今年も「かかりつけ医通信」では、いろいろな医療情報を判り易く皆様に
お伝えし、少しでもこの世の中が明るく良い方向へ向かうように、尽力
して行きたいと思います。

さて、昨年は国内ばかりか、国際的にも大きな事件が相次ぎ、景気回復
の兆しも見られず、その場しのぎの医療制度改革により、医療の現場にも
様々な影響が出てくるものと思われます。

このような状況の中、「分かり易く・簡潔に」をモットーに編集作業を続けて
行く所存ですが、簡略に過ぎると却って誤解を招いたり、判り難くなったり
する場合もあり、やや配信が長文となりがちです。この辺り、どうぞ御理解
の程を、宜しくお願い致します。
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▼目次▼
「近未来の医療技術の進歩」
1)カプセル型内視鏡の開発
2)ロボット手術
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さて、「2002年」の最初の号ですので、今回は実現しつつある夢のよう
な検査のお話や、すでに実用化が進んでいるロボット手術について紹介し
ます。
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「近未来の医療技術の進歩」
 私たちが医者になった頃には思いもつかなかったような方法が実用化
に向けて動き出しています。
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●カプセル型内視鏡の開発
 皆さんの多くは「内視鏡検査」と聞いただけで、きつい・苦しい検査で、
出来れば受けたくない検査の一つだ言われると思います。
 大腸検査はレントゲン検査にしろ内視鏡検査にしろ、肛門から造影剤を
注入したり、内視鏡を入れるのですから決して楽な検査ではありません。
 近年大腸癌の発病率が高くなり検診の重要性が叫ばれ、大腸癌検診では
便の潜血検査が行われています。これは便の中に出血があるかどうかの検査
で直接大腸癌の検査ではなく、陽性者には精密検査の大腸検査が不可欠なの
です。
 もっと簡単に精度の高い検診が行えないものかと誰もが考えていました。
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 昨年の5月にイスラエルのギブンイメージング社が錠剤サイズのカプセル
型カメラ「M2A」を発表しました。
 このカプセルには超小型カメラと光源装置、無線送信機を内蔵し、幅11
ミリ、長さ30ミリのカプセル型内視鏡を患者が飲み込むと、患者の体につ
けたアンテナを通して映像が録画装置に送られ、ファイバー検査に劣らない
結果が得られると言うものでした。
 カプセルは24時間以内に排出され、患者は検査の苦痛が大幅に軽減され、
大腸検査としては夢のような発表でした。
 年輩の方ならご存じかも知れませんが、若い頃映画で見た「ミクロの決死
園」のに一歩近づいた方法なのです。

 このニュースは、驚きを持って世界中をかけめぐりましたが、発表後、い
くつかの問題点が指摘され、それらを解決し実用化できるのは5年〜6年先だ
と言われていました。
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●国産のカプセル型内視鏡「NORIKA V3」
 ところが年末に国内でも医療用カメラメーカーのアールエフ(長野市)が、
世界初のバッテリーレス方式のカプセル型内視鏡を発表しました。
「MA2」の欠点をカバーし、しかも画像の質が鮮明で、操作もしやすく、価格
も低く抑えられるというものです。
 日本で開発が進められていたことに対する驚きと、検査の質の向上、また近
未来に実用化される程、ほぼ完成に近づいていることなど医療界にとっても驚
きでした。この会社は世界最小の無線CCDカメラを開発しており、その技術が
今回の医療に応用され、カプセルの小型化に成功したようです。

 カメラの部分はカプセル型で、幅10ミリ、長さ23ミリのカプセルの中に
CCDカメラが内蔵され、対外モニターによって画像を見ながらカプセルの位置
や傾きなど操作ができる様です。医師はそのテレビ映像を見ながら、カプセル
を操作して、患部の診察を行うことができる他、カプセル内タンクにあらかじ
め注入された薬などを投与することも可能とされています。

 このカプセルカメラの映像は、現在市販されているホームビデオカメラの解
像度に匹敵するほどの高画質で、一秒間に三十枚の画像を送ることができ、完全
な動画として体内の微妙な動きを見ることもできるようです。市販されている
VTRやプリンターなどビデオ製品にも全て対応し、ビデオキャプチャーを用
いればパソコンへの入力も可能であると言われています。

 使い捨てのカプセルカメラの価格は100ドル(US)以下、体外コントロ
ール装置は一万ドル程度で販売予定であり、将来さらに価格を下げることも
可能だといわれています。
 すでに動物実験を終了しており、研究に参加している数カ国の医科大学など
とともに2002年春から臨床実験に入る予定で早ければ年度中に実用化の見通
しです。

 さて、このカプセル型内視鏡の開発名称は「NORIKA V3」と名付けられてい
ます。1998年に「NORIKA V1」を制作し3代目という事です。
 この名前の由来についてアールエフ社に尋ねましたところ、開発に携わってい
る技師さん達はみんな男性で、この会社では開発している製品の名前は女性の名
前を使うのが伝統??で、今回は「色っぽい女優さんと同じ名前にした」という
事でした。F・紀香さんの「NORIKA」だそうです。
 「NORIKA」さんは今年は国際スターとなりそうですね。

是非ホームページをご覧下さい。
超未来診察や治療を行える「マイクロ・ロボット潜水艇」
http://www.rfnorika.com/index2.html
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●ロボット手術

もう一つはここまで進んでいるロボット手術です
 アメリカでは2000年7月「ロボット手術」が認可されて実用化されていま
す。昨年のNHKのクローズアップ現代でも手術支援ロボットとして紹介されて
いましたのでご記憶の方もあると思います。
 認可されたロボット手術装置は、「ダ・ビンチ手術システム」と呼ばれてい
ます。術者は、コンピュ−タの前に座って、ハンドグリップと足ペダルを使い、
ロボットの3本のア−ムを、モニタ−を見ながら操作します。元はと言えば、
「戦場で傷ついた兵士を離れた場所から手術できないか」というアイデアだっ
たようです。

 アジア地域では慶応大の導入が初めてで、その後、九州大病院も導入されま
した。開腹せずに外科的治療を行う方法は、内視鏡や腹くう鏡を使った手術が
あり、胆石症のほか早期のがんなどさまざまな病気で広く用いられていますが、
この手術はこれをさらに進歩させたもので主に腹部・胆嚢の手術に使われてい
ます。ヨーロッパなどではすでに600例以上の手術が実施され、心臓の冠動脈
バイパス手術など難易度の高いものにも応用が始まっている様です。
 ロボットを使うと非常に精密な操作が可能で、立体画像で拡大された細い血
管を縫うなどの微細な作業がスムーズにでき、手ぶれによる誤操作もコンピュ
ーターで制御されるため、起きにくく人間の医師が行うよりも、侵襲性が小さ
いといいます。
 このような利点から、今後は心臓や肝臓などの手術に利用でき、将来は臓器
移植への利用も見込まれています。

 またこのシステムでは手術を行う病院と、大学病院などが同じ患部のモニター
画像を見ながら共同で手術を進める「テレサージェリー」(遠隔手術)が可能
になります。
 将来は地元の病院に入院して、世界の専門医に手術してもらう事も可能に
なるかも知れません。これからの外科医はコンピューターゲームで腕を磨くこ
とになるのでしょうか。
 このロボットは価格は100万ドル(1億円)ということですが、多くの医
療機器の値段に比べると1億円は高くないと思います。
 ダビンチ以外にも腹部手術の「ゼウス」とか股関節の手術の「ロボドック」
という手術支援ロボットも欧米では稼働しています。

 そのうち国産の支援ロボットも出てくるとおもいますが、その時は名前を
「ブラック・ジャック」として貰いたいものです。
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手で触らない手術
http://www.hotwired.co.jp/news/news/Technology/story/1091.html
米食品医薬品局がロボット手術を認可
http://www.hotwired.co.jp/news/news/20000714302.html
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