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 かかりつけ医通信     第11号   2001年11月22日発行
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    健康・医療のお役立ち情報・・・医療の現場から

▼目次▼
1)インフルエンザについて
2)医療制度改革特集号その4
 第4弾です。市場原理の導入と保険者機能強化について。

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「かかりつけ医通信」では第5号でインフルエンザワクチンの接種回数と高齢者公費
負担の情報をお伝えしました。11月7日より予防接種法が改定され、65歳以上の高齢
者のワクチン接種は各自治体公費補助が行われています。一歩前進ではありますが、
自治体の取り組みにも差があり、接種料金・補助の額など自治体でバラバラですし、
また痴呆や意識障害などでワクチン接種の意思表示が出来ない方は補助の対象から外
されているなど、まだ問題も多く残しています。

今回は「インフルエンザ」について、少し詳しくご説明します。
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●はじめに
●インフルエンザの症状
●インフルエンザウイルスの種類
●今年のワクチンの成分と流行予測
●インフルエンザの迅速診断法
●インフルエンザの治療
●新しい抗インフルエンザ薬 (リレンザ・タミフル)
●インフルエンザ脳炎・脳症と解熱剤について
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●はじめに

インフルエンザは毎年必ず流行し、乳幼児から高齢者に至るすべての年齢層に様々な
健康被害をもたらしています。例年1-2月は「超過死亡」と言われる、「インフルエ
ンザが直接の死因ではないが、インフルエンザの感染を引き金に肺炎や心不全などの
合併症で死亡する例」が増えることは知られています。実際には毎年数千人の死亡と
数万人規模の入院患者が発生しているとも言われ、社会経済的活動にも多くの損害を
与えています。特に健康弱者には牙をむく、危険な疾病であり、欧米では“命のとも
しびを消す”病気として恐れられています。
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●インフルエンザの症状

インフルエンザと普通感冒(かぜ)を症状だけで区別することはかなり難しいと思いま
す。
ふつうの「かぜ」が喉の痛みや咳ではじまることが多いのに対して、インフルエンザ
は突然の悪寒・発熱や倦怠感、あるいは全身の痛み(頭痛も含む)ではじまります。
「かぜ」に比べて熱も高く、熱は39度から40度になることもあり、 しかもそれが4-5
日継続します。 全身症状は重く、食欲減退、吐き気、下痢などがでてくることもあり
ます。高齢者や心臓・呼吸器に持病のある患者では病気の悪化や脱水・肺炎の合併で
入院が必要になったり、乳幼児では脳炎などを合併することもあり、死亡率も高い病
気です。
潜伏期は1日から5日(平均3日間)とされています。また流行する時期も大体決ま
っていて、日本では1月から3月が多く、冬以外の時期の流行は稀です。
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●インフルエンザウイルスの種類

インフルエンザウイルスはウイルス粒子内の核蛋白複合体の抗原性の違いから、A・
B・Cの3型に分けられますが、流行的広がりを見せるのはA・B型です。特に症状
が激しく重症化がみられるのはA型がほとんどです。
ヒト以外にもブタやトリなどその他の宿主に広く分布しているので、A型インフルエ
ンザウイルスは、人畜共通感染症としてとらえられています。最近の研究では、渡り
鳥がインフルエンザウイルスの運び屋として注目を浴びていますし、香港のニワトリ
の新型インフルエンザウイルスが注目された事は記憶に新しいことです。
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●今年のワクチンの成分と流行予測

インフルエンザウイルスの流行株の予測については、毎年2月と9月にWHO本部で行
われるワクチン株選定会議で世界中の成績を検討します。それに基づいて次年度に流
行する可能性の高いインフルエンザ株(A型2株,B型1株)を想定し、加盟国に連絡する
仕組みです。各国はそれに合わせてワクチンを作成します。
今年のワクチンは、A/H3N2(香港)型のパナマ株、A/H1N1(ソ連)型のニューカレド
ニア株、B型のヨハネスバーグ株を混合したものです。
流行の予測に関しては、専門家の間でもいろいろ意見が違うようです。昨冬は例年の
10分の1から20分の1の規模の流行で、これは日本だけでなく世界的な傾向であり今年
もそれに近い小規模の流行と予測している専門家が多いのですが、逆にこの2年間は
小規模流行だったため、今年は大きな流行となるとの予測もあり、一定していません。
予防接種のワクチンは流行予測から作られるわけで、もし予測が大きく外れたり新型の
ウイルスが流行すれば、ワクチン接種も効果がない場合もあること、大流行もあること
は理解しておいて下さい。
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●インフルエンザの迅速診断法

最近の話題としてはインフルエンザの迅速診断がある程度可能になったことがあげら
れます。
インフルエンザの診断については、かなり研究は遅れており迅速に診断できるように
なったのはつい最近のことです。11年1月にはじめてインフルエンザ迅速診断キット
「ディレクティジョンFluA」が発売されましたが保険適応は秋まで行われませんでし
た。その後各社から迅速診断キットが発売されています。
昨年まではA型のみの迅速診断が可能でしたが今シーズンはA型・B型の鑑別も可能
となりました。流行の初期や治療法の選択において「インフルエンザかどうか・A型
かB型か」の正しい診断が必要な場合には、鼻腔や咽頭の拭い液や洗浄液で比較的簡
単に、短時間で判定が出来ますので、かかりつけ医に御相談下さい。と言っても検査
は10数分間かかりますし、検体の希釈や試薬の滴下などその場を離れることができま
せんので流行時期に検査技師のいない診療所で、インフルエンザ疑いの患者さんに全
てに検査を行うことは現実的ではありません。
明らかに流行している時期には臨床症状で推測できますし、検査代もかかりますので、
全ての方に迅速診断が必要だとは思えません。またA型・B型の鑑別が可能な新しい
診断キットは生産体制の問題や初期不良などですぐに入手することは困難になってい
ます。
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●インフルエンザの治療

インフルエンザの治療に特効薬はなく、これまでは対症療法が主体でした。
対症療法とは、発熱には解熱剤・疼痛には鎮痛剤・咳には鎮咳剤など症状を和らげる
為の処方治療で、原因を治す治療ではありません。ところがこの数年インフルエンザ
の治療に治せる薬が現れました。

●アマンタジン(製品名シンメトレル)
アマンタジンは我が国では発売後20年以上たち、パーキンソン病や脳梗塞の治療に
使われていますが一般には馴染みの薄い薬でした。欧米ではインフルエンザの治療や
予防薬として使われており、我が国でも保険適応を訴えて来ましたが、やっと平成10
年11月A型インフルエンザ用の抗ウイルス剤として認可されました。
症状の改善効果は明かですし、小児にも使用されます。A型だけにしか効果はありま
せんが、一般的に重症化するのはA型ですからこれに効果があることは素晴らしいこ
とです。
アマンタジンは中枢性の副作用が問題にされていますが、A型インフルエンザ初期の
成人への一般的な投与量と投与期間(100mg・4日間)では大きな副作用はないと考
えられます。まれに嘔気などの消化器症状やふらつき、不眠・脱力感などの中枢神経
症状が出現することがあると思って下さい。
むしろアマンタジンは薬剤耐性の問題が指摘されています。短期間に、かつ高率に
耐性のウイルスが出現し薬が効かなくなることもあるので、アマンタジンの乱用は
避けるべきだと指摘する専門家もいます。
ただしハイリスクの高齢者には出来るだけ発病後早期に積極的に投与していいと考え
ます。発病してからの、素早い対応で重症化はある程度防げると考えています。
アマンタジンのもう一つの利点は医療費の経済効果が大きいことです。アマンタジン
は薬の値段も安く(シンメトレル50mg錠・42.6円ですので通常の成人への投与量
1日2回4日間処方では薬剤費はたった341円です)、もちろん解熱剤や鎮咳剤などの
対症療法薬も処方されることがありますので医療費はこれだけではありませんが、上手
な使い方が出来れば、下記に述べる新薬以上の経済的効果もあると思います。
小児への投与の是非は未だ確立されていませんが、「小児では5mg/kg/日、1日150mg
を上限とし分2で4日間内服させる。発症から48時間以上経過した例には投与しない。」
と言う基準で、小児にも積極的に治療している専門医もありますし欧米では使われて
います。
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●新しい抗インフルエンザ薬(リレンザ・タミフル)

インフルエンザウイルスへの新薬開発も積極的となり、昨年から相次いで発売されて
います。
インフルエンザウイルスが細胞から細胞へ感染、伝播していくためにはウイルスの表
面に存在するノイラミニダーゼの作用が不可欠ですが、この作用をブロックすること
によってインフルエンザウイルスの増殖を阻害する抗インフルエンザウイルス剤「ザ
ナミビル」がまず開発されました。ノイラミニダーゼはA、B型に共通であることか
ら、A型・B型インフルエンザ両方に効果があります。
ザナミビル(製品名 リレンザ)は乾燥粉末の吸入薬で特殊な吸入用容器にセットして吸
入する薬剤で高齢者には処方しにくい薬剤です。一方続いて開発されたリン酸オセルタ
ミビル(製品名 タミフルカプセル75)は内服薬ですので使い易くなりました。
両薬剤とも保険適応(薬価収載)は今年の2月からでしたので、本格的に使用され評価を
受けるのはこれからのシーズンだと思います。主な副作用は腹痛・下痢・嘔気などの
消化器症状だと言われていますが、吸入のリレンザには気管支痙攀・呼吸困難などの
記載もあります。
薬価について、タミフルは1カプセル396.3円と高薬価ですので、朝夕2回投与5日間
での薬剤費は3963円となり、アマンタジンに比べ約10倍医療費は高くなります。
これらの新薬は現在は15歳以下の幼児・小児への適応は確立されていませんが、リレ
ンザは小児用の吸入薬も研究されており今シーズンに間に合うかも知れません。
いずれにしても新薬は医師に十分相談のうえ、説明をうけて処方して貰って下さい。

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●インフルエンザ脳炎・脳症と解熱剤について

インフルエンザの話題に欠かせないものはインフルエンザ脳症です。
インフルエンザの経過中に、意味不明の言動、幻視、意識がはっきりしない、けいれ
ん等の症状が現れることが稀にありますが、その場合、急性脳炎・脳症を起こしてい
る可能性を考える必要があります。

厚生労働省では、インフルエンザ脳炎・脳症が起こる仕組みや治療方法を研究するた
め専門家による研究班を組織し、平成11年からこの疾患に関する調査を進めてきまし
た。これまでの調査では年間100-200例ほどの発症ですが、その1/3は死亡、約10%は
日常生活に支障をきたす程度の後遺症が残る重症合併症です。発症者の多くは、1〜
5歳の幼児です。
その調査の過程で、ジクロフェナクナトリウムという成分を使った解熱剤(製品名
ボルタレン他)を投与された脳炎・脳症の患者さんが死亡した割合は、解熱剤を投与さ
れなかった患者さんやジクロフェナクナトリウム以外の解熱剤を投与された患者さん
が死亡した割合より多い傾向がみられたことが指摘されました。
また、これらの研究ではひとりひとりの患者さんについて解熱剤とインフルエンザ脳
炎・脳症とのはっきりした因果関係を見つけだすことはできないものの、総合的に判
断して、インフルエンザ脳炎・脳症の患者さんにはジクロフェナクナトリウムを投与
しないように注意を喚起しました。
そしてジクロフェナクナトリウムの使用上の注意にも禁忌(患者には投与しないこと)
に「インフルエンザの臨床経過中の脳炎・脳症の患者」が加えられました。

では幼児・小児のインフルエンザの高熱にどう対処するかが問われることになります
が、日本小児科学会では、平成12年11月、インフルエンザに伴う発熱に対して使用す
るのであればアセトアミノフェンが適切であり、ジクロフェナクナトリウム又はメフ
ェナム酸(製品名 ポンタール他)、非ステロイド系消炎剤の使用は慎重にすべきであ
る旨の見解を公表しました。
アセトアミノフェンは非ピリン系で,中枢神経系の体温調節中枢に作用し,小児科領
域の急性熱性疾患に対して速効的でかつ確実な解熱効果が期待できる。」とされてお
り、市販の頭痛薬、生理痛薬、鎮痛薬や風邪薬のほとんどに配合されています。
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以上少し長い説明になりましたが、インフルエンザの現状をお伝えしました。
多くの方のホームページのご意見を参考にさせていただきました。インターネット上
では一般の方にも分かり易く説明したホームページがありますので、詳しく知りたい
方はこれらのページをご覧下さい。
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日本医師会
http://www.med.or.jp/influenza/index.html
インフルエンザ総合対策
現在のインフルエンザ情報全て網羅しています。

国立感染症研究所感染症情報センター
http://idsc.nih.go.jp/index-j.html
岡部信彦先生のインフルエンザ総説などもあります

厚生労働省 インフルエンザ対策キャンペーンホームページ
http://influenza-mhlw.sfc.wide.ad.jp/

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○医療制度改革について(その4)
●市場原理の導入
●営利企業の参入
●混合診療の導入について
●総枠抑制論
●高速道路建設費の総枠抑制と医療の総枠抑制は同じ土俵で考えられている。
●保険者機能の強化
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医療制度と構造改革について
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●市場原理の導入
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 医療に営利企業の参入や混合診療導入、自由診療など市場原理を持ち込もう
という動きがあります。また保険者機能の強化というお話もあります。医療に
おける医師の裁量権と合わせて、どう考えるかというこかと思います。
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/sizyougenri.html
医療の基本的性質
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●営利企業の参入
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 市場原理の導入についてまずは一般的な概観を述べてみます。わが国の所得
格差は、現在行われようとしている、「聖域なき構造改革」の推進により今後
拡大傾向に進むとみられます。
一方市場原理の導入により
1)自助:自己責任の原則を明確にする。
 社会共通資本としての医療は必要ない。リスクは自分で負いなさい。弱肉強
食のまさに鉄火場のルール。弱者保護という、社会共通資本の役割を忘れてい
るのではないか。

2)営利病院参入
 必ずしも営利病院が低コストで運営されているとはいえず、逆に不採算医療
の抑制や、支払い能力の乏しい患者を拒否するなど、クリームスキミング(良
いところ取り)を行う傾向がある可能性がある。

3)コスト感覚を上げるために自己負担をあげましょう?。需要抑制
 医療費の75%は入院で使われている。いわゆる社会的入院を除き、価格弾力性
のない分野である。自己負担増にしてコスト感覚をあげて、影響が出るのは、
まさしく軽医療である。よって患者さんはより重症化するまで受診しないこと
になる。病気の大原則は早期発見早期治療である。情報の非対称の存在下では、
需要抑制策は解決にならない。

4)医療の効率化と質の向上が競争で果たされる?
 また、医療の効率化とは質の向上、コスト削減である。質の向上は選択性(多
様性)をますことではない。ましてや競争原理であがるわけではない。医療と
いう財の性質上、医師も患者も質の向上に対する、きわめて強いインセンティ
ブを持つ。質の向上とは、外科医にとっては手術成績の向上。内科医にとって
は治療成績の向上である。技術革新こそがポイントである。開放論者の言う保
険外負担(自由診療)などのアメニテイを増やすことが、何故質の向上になる
のか、ほとんど理解不可能である。それは医療の質の低下と、無意味な医療費
の増加しかもたらさない。またそれは現状通り保険負担外であろう。アメニテ
イでしかない。サービスランチは保険外負担なのは自明である。
 社会共通資本である医療を、市場原理に委せれば、医療費の増加と、医療ア
クセスの不平等の拡大という副作用を生むことになる。医療においては、市場
原理の単純なアナロジーは通用しない。医療に求められるのは、規制緩和では
なく、規制の再構築なのである。より効率的で、質の高い医療サービスの提供
を促すインセンティブをどの様に構築するのかが問われている。本間氏を初め
とする、経営諮問会議の論は、そういう意味では暴論に近いと思われる。

http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/minkan.html
民間保険導入論批判
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/zaiin.html
在院日数の短縮は医療費の高騰をまねく

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●混合診療の導入について
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 ホテルコストは健康の範囲から外れるから、健康保険外です。「混合診療」
の規制緩和、特定療養費の安易な拡大は、自費診療部分に民間保険が適用され
るため、費用抑制効果はなく、かつ公私合わせた医療費の上昇をもたらす。同
時に、診療の質の低下を招く可能性も高い。また、医療費抑制が目的であるか
らには、現在の、保険診療の範囲縮小につながると思われます。貧しい方は診
療を受けられなくなる。安易に、自己負担増に結びつくような政策をとれば、
医療はセーフテイネットではなくなる。避けるべきであるとは思います。
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/kongou.html
混合診療に関する論点
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●総枠抑制論
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 医療費の伸び率から総枠を決めてオーバした分を機械的に削るという案です。
前GE会長のジャック・ウエルチの言葉で、「一般企業では、経営が苦しくなる
と、すぐに賃金の一律カットとか、給料の一斉凍結という手法が使う。これは
経営者としては、「痛みを分かち合う」という名のもとに、現実を直視しない、
逃げの経営姿勢でしかない。経営において、まず何よりも大切なことは、企業
内の人的育成を図り、質の向上をはかりながら。常に合理的な、経費削減策を
とるべきである。」(日経新聞2001・10・25)
 合理的な医療の効率化と、経費削減策をとれなければ、当然、会社はつぶれ
ると思います。一律カットなどという施策は、無能な経営者の代名詞である。
しかし、現在の財務省をはじめとする政府案は、人命に関わる医療にたいして、
医療の総枠抑制とか、保険者と医療と、患者さんの三方痛み分けとか、乱暴な、
理念もない、合理性もない、経費削減政策を提言しております。これは明らか
に無能な政策といって良いでしょう。
根拠を保った医療の効率化と、合理的な医療費抑制をはかるべきと思います。
健康の定義は、社会構造の変化、疾病構造の変化で変わるのは当然です。鍼灸、
温泉、皆効果はある。高額医療でも、いずれの分野でも、cost benefit study
が必要と思われます。それではじめて費用負担の論議となる。
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/souwaku.html
総枠予算制について
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●高速道路建設費の総枠抑制と医療の総枠抑制は同じ土俵で考えられている。
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 政府・自民党は、今後の高速道路整備のあり方について、投資総額を大幅に
抑制する方向で調整に入ったようです。
 道路行政は60兆円産業。医療は30兆円産業で、日本の予算編成は開発途上国
型の経済なんですね。そして総枠抑制論を道路行政と医療に網掛けを等しく行
おうと主張しているわけです。土木工事と人命は同じレベルで論じているわけ
ですね。まことに乱暴な論としかいいようがない。医療費を中身を問わないで、
削減だけすれば、医療の質を下がるわけです。増税無き構造改革であって資源
を、高齢化社会の成長産業である医療、福祉にまわすとかいう発想は全くない
ですね。最も、民間企業を入れて、競争させるという発想はあるようですが。
医療でなにを競争させるつもりなんでしょう。民間企業を入れば競争して質の
向上をはかると言う言葉は意味不明です。
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●保険者機能の強化
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1)電子化について
 電子化は賛成ですが、普及率が低すぎる現状では事実上不可能でしょう。レ
セコンの無償配布など経済的インセンティブをつける必要がある。そうでないと、
導入コストがかかりすぎ、中小医療機関の経営を圧迫する。
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/reseptden.html

2)保険者によるレセプト審査
2−1)レセプト審査は一元的に実施したほうが効率的
 保険者直接審査というが、無床の医療機関である当院でも、100個程度の保険
者がいる。病院クラスなら1000件は越すであろう。それにすべて別々にレセプ
トを郵送するのか?郵送事務が大変である。
2−2)審査権を、直接、保険者に与えれば、公平性が担保されない
 直接契約した場合、医療機関や患者さんの生殺与奪権は、保険者が握ることに
なる。医療機関は安くしないと保険者と契約できない。したがって医療機関は、
必要な医療もしない可能性がある。この場合医療の質の低下が起こる。また公平
な第3者機関がなければ、患者さんから、あるいは医療機関からの保険者への訴
訟は急増するでしょう。現在でも、交通事故をめぐる被害者からの訴訟のほとん
どは、保険会社相手の任意保険関係です。
2−3)インフォームドコンセントと相入れない
 保険者は、不必要な入院や、不適切な医療について、支払いを拒否するとともに、
悪質な医師・病院を排除する権限も与えられ、いわば医療警察としての強大な役割
を担わされる形になります。患者を診察して、インフォームドコンセントを行い、
実施された治療に対して、一度も患者を診たこともなく、また患者と話したことも
ない、非医療者の保険者が「医学的必要性が認められないので保険給付をしない」
と、反故にするのが利用審査の制度です。公平性の担保されない審査では患者さ
んも、医師もとうてい納得しないでしょう。
3)保険者と医療機関の直接契約による診療報酬の引き下げ
 診療報酬の割引契約が、認められれば、健保の加入者が決められた医療機関に
かかった場合、治療費の総額や自己負担が安くなることになる。患者さんにとっ
ては、一見、お得な制度になりえます。
3−1)患者さんにとっては不平等となる。
 現在は個人のリスクに関係なく、一定の負担で必要な医療を受けることがで
きるように、医療機関へのフリーアクセスを確保しています。
保険者が一部の医療機関とのみ契約を結ぶシステムとなれば、
 保険者は、医療の質は二の次にして、安い医療機関を選ぶことになる可能性が
ある。また割引率は、医療機関と保険者間の力関係で決まる。保険者間の格差が
目立つ中で、保険者を選べない患者さんの間で不平等が生ずる。フリーアクセス
と公平性という医療保険の大原則が崩れる。これはいわば大企業の論理を強く感
じます。他方、被保険者が保険者を選び、それを保険者は拒否できないとなると、
賃金の低い人、年齢の高い人が集中した保険者の財政は、成り立たなくなる。
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/hokensyatyoku.html
保険者との直接契約について
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次号に続きます
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