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 かかりつけ医通信      第10号   2001年11月17日発行
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    健康・医療のお役立ち情報・・・医療の現場から
▼目次▼
1)変形性関節症に、効果ありとされる「健康食品」について

2)医療制度改革特集号その3
医療制度改革について第3弾です。

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変形性関節症に、効果ありとされる「健康食品」について
●健康食品の種類
●健康食品の効果
●消炎鎮痛剤
●薬の一般的な注意

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●健康食品の種類
「いわゆる健康食品」は、厚生省によれば、保険機能食品(特定保健用食品、
栄養機能食品)と一般食品(いわゆる健康食品を含む)に別れます。そのほか
に医薬品(医師の処方必要)と医薬部外品が有ります。くわしい分類は以下で
す。ここで扱うものは、大部分は「いわゆる健康食品」かと思われます。
保健機能食品の表示等に関する報告書について
http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1211/h1108-1_13.html
 変形性関節症に効果ありとのことで、いろいろな健康食品が出てきています。
最近、健康相談で多いのがサメ軟骨(コンドロイチン硫酸)やグルコサミンな
どです。商品としてはサメ軟骨末、関節活々(クラレファミリー製品)、フレ
ックスパワー(ロート製薬)、グルコサミン(東配)、アルスラック(日本フ
ァミリーケア)、ジョイントサポート(甲陽ケミカル)等があげられます。
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●健康食品の効果
 変形性膝関節症に対し、消炎鎮痛剤に、いわゆる健康食品であるコンドロイ
チン硫酸製剤と、グルコサミン製剤の混合物を併用した報告があります(戸田
ら2000年8月)。その報告では併用群は若干の効果はあるにしても、消炎鎮痛剤
単独群との間に有意差は認められなかったとしています。厚生省の見解でも同
様で、健康補助食品として使用するのが妥当となっております。

 グルコサミンやコンドロイチン硫酸製剤は、まったく効果がないわけでもな
いですが、非常に作用も弱く、副作用もすくないので、いわゆる健康補助食品
として、分類されて、一般小売店での販売が許可されているわけです。効果が
ないわけではありませんので、一般の方が購入されることを妨げはしませんが、
現在、これらのものは、効果に比すれば、高すぎると思われます。コストパフ
ォーマンスを考えれば、医師としてはあまりおすすめはできません。やはり通
院に便利なお近くの整形外科医の正確な診断のもとに、原則通りの治療を続け
ることをおすすめいたします。近道はないのです。

変形性膝関節症の一般的な治療
http://www.orth.or.jp/Hospital/knee/oaknee.html

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●消炎鎮痛剤
 消炎鎮痛剤は効果もありますが、確かに胃腸障害やアレルギーなどの副作用
もないわけではありません。またまれに重篤な副作用も発生します。そのため
に、使用にあたっては、医療用医薬品として、専門家である、医師の管理のも
とに使われるわけです。慎重に使えば痛みのない快適な生活を送れます。幸い
医学の進歩により若干、これらの欠点を克服した薬も出てきています。使用に
あたっては薬の性格を十分に把握して、医師の注意を良く守り、賢い使い方を
なさることが大切です。 いたずらに副作用を恐れることなく、きちんと医師に
指示に従ってください。
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●薬の一般的な注意
1)服用時刻のめやす
食後…・食事の後約30分に服用
2))薬の正しい飲み方は?
 薬は少量の水かぬるま湯で飲むのが原則です。錠剤・カプセルはかまずにその
まま、少量の水とともに飲み込みます。お茶で飲んでも大抵の場合、かまいません
3)外用薬
 シップ薬は 1日1-2回貼り替え 坐薬は発熱、疼痛時頓用で1日1-2回塗り薬は、
1日数回。特に指示のない場合これでよいと思います。
4)薬を使用するときの注意点
1)医師、薬剤師を信頼する
2)自己判断をさけ、よく相談をする
3)医師に必ず告げる事項
 薬に対するアレルギー歴、副作用歴、持病の有無と使用中の薬、妊娠の有無、
授乳の有無。
5)薬をもらって必ず守る事項
 服用により何らかの異常が出たら直ちに服用を止める。またかならず医師に伝え
る。
自分に処方された薬だけを飲む
指示用量用法回数を守る
一度に2回分以上の薬を飲まない
市販薬と一緒に飲まない
きちんと保管する(冷暗所、冷蔵庫)
6)現在流行っている民間療法
 ヨーグルトきのこ ドクダミ モロヘイヤ、オオバコ ニチニチソウ 高麗人参、
尿飲用療法 酢大豆 酢卵。、56円療法、冬虫夏草 イカリソウ
 これらは本来の病気の治療効果に影響を及ぼすおそれがあります。必ずかかり
つけ医師に相談してください
7)健康食品
 医薬品と違い副作用のチェックがないぶんお薬よりも注意が必要、しかも民間
療法(薬)との併用で重篤な臓器障害がおこった報告もあり、要注意です
8)薬の併用
 医師の承諾なく異なる病院の薬どうしを併用して飲むことは安全域を超えるこ
とがあり危険、病院の薬と市販薬の併用も、未知の副作用が発生することがあります。
また市販薬の慢性長期使用は特に多重障害の危険性がある。

お薬のはなし
http://www.sqr.or.jp/usr/demi/demihtml/kusuri.html
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参考文献
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http://www.mhw.go.jp/shingi/s0303-3.html
医薬品販売規制特別部会報告書

戸田佳孝ら 変形性膝関節症に対する栄養補助食品の効果
整形災害外科43、no8、931−937、2000年

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○医療制度改革について(その3)
●医療の効率化と質の向上
●効率化
●医療の効率化は競争原理によって達成できるか?
●営利企業と医療:使命
●国家の役割
●医療自体の質の向上

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●医療の効率化と質の向上
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 効率化とは、費用削減することではなくて、資源を最適に利用することが
経済学でいう効率化です。
 医療の効率化は、質の向上と、コストの削減によりはかられるが、医療とい
う財の性質上、質の向上は、医師の教育と技術革新によってなされる。開放論
者の言うごとく、競争原理や、選択性の向上(自由診療、保険外負担)ではか
られるものではないと考える。医療の効率化は、まずは質とコスト感覚を持っ
た医師を育てることが第一である。研修制度や専門医制度の充実が望まれる。
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/kaihou.html
市場開放論の代表例
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●効率化
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 医業経営の効率化に市場原理を持ち込めばすむのかといえば、そう簡単には
いかないのがこの医療という財の厄介なところではないでしょうか?
 規制緩和論者が単純に主張するごとく、経営の効率化に、株式会社の手法を
役立つとするのはよいが、それがそのまま株式会社方式が優れているイコール、
株式会社を導入するとなるのかどうかですね。まずは扱う財の性質が基本的に
異なるとは思います。
 規制緩和論者は、現状の病院の非効率の否定と効率化を求めるあまり、論理
に飛躍がありすぎる気はします。医療経営者が株式会社の勉強をするのは大い
に結構ですが、それが直ちに株式経営するということとは、全く意味が異なる
ということかと思います。病院経営のみの面からのみ、考えるのは視野が狭い。
あくまでマクロ的な医療経済的な視点が大切な気はします。導入によりどうい
う影響が出るのか?
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/zikofutan.html
自己負担増について
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●医療の効率化は競争原理によって達成できるか?
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 種々の財に競争を導入すると何が起きるか。
a)電話通信とか、宅配便とかは競争すると価格はどんどん下がります。
b)エチレンとか、コンピュータのDRAMみたいなものは自由競争の結果、価
格は乱高下します。
c)レストラン、あるいはオペラ、コンサートとか、競争が激しいところで値段
が下がっている兆候は全くありません。質の高いものを供給しようというインセン
ティブが強いからです。
 つまり3種類の財は財として全然違うのですね。上の財は質が同質的で供給
制限がない。一番下の財は供給制限があるのです。こういう財で、顧客の側も
質を求めている財では、規制緩和によって価格が上がりかねない 医療という
のはどれに属する、言うまでもなく(c)に決まっているわけです。競争の帰
結は、弱者が排除されます。しかし、医療とか高齢者ケアというのは弱い人の
ためのサービスです。ここで弱い人が排除されてしまったら、大変です。医療
や、高齢者ケアというのは、弱い人のための仕組みとしてつくってきたのに、
わざわざつくってある弱者救済の仕組みを壊してはいけない。
 効率化はすべきだけれども、競争原理を持ち込むとうまくいくというのは、
全然答えになっていません。

http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/drg1.html
DRG/PPSに期待された事
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/drg2.html
DRG/PPSの失敗
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/kanriebm.html
管理EBMについて
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●営利企業と医療:使命
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 営利企業というのは、悪徳だからやってはいけない。こんな馬鹿なことはな
いのです。営利企業は悪徳ではありません。営利性の本質は機会主義なんです。
利益を上げることが経営者の使命ですから、儲かることしかやってはいけない
のです。一方医療や高齢者ケアは儲からないこともしないといけない、そこに
ニーズがあるから行うのです。営利企業と医療機関では本質的な社会的な使命
が違うわけです。
 よいシステムを作るためには、公正と効率というのが2本柱なんです。その
ときに医療のように本質的に弱い人のためのシステムを、営々としてわれわれ
作ってきたわけですから、そこでは公正感なくして効率は果たせない。逆に効
率性がなくては公正は果たせない。こういうシステムであることをいつもわき
まえて政策主張しないといけないことになります。
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/yokusei.html
医療費抑制論について
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●国家の役割
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 医療を中心とする社会保険制度は、安全保障と同様、国家の基本的な役割で
す。社会共通資本としての、医療はどういう財なのかと言う問題 社会共通資
本は「公平性」「信頼性」を基本とした制度でいくのが基本。その前提のもと
に効率化を議論すべきではないでしょうか。医療という財は社会共通資本の観
点からは公平性の高いものである。しかも株式会社にしたからといって効率は
必ずしも上がらない。逆に医療費に高騰を招く可能性が高い。患者さんの負担
増となります。従って、株式会社や営利企業の医療への参入には反対します。
皆保険制度は維持すべきであると考えます。
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/zitugen.html
政府案が実現しようとしている世界
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●医療自体の質の向上
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これはいろんな方法がありますね。
1.診療実績・業績の明確化。情報公開。
2.診療録の責任管理
 正確な記録とそれに責任を持つ。電子カルテの導入
3.医師の診療に対する裁量権と患者の自己決定権informed cosent
 医師の裁量権とともに、患者の自己決定権も大切。また患者の意志の決定
には自己責任の原則も伴う
4.医療事故に対する対応:法律に対する認識と対応。透明性の確保。
5. 連携機能に対する認識
 IT化の推進による合理化。
6.医療の標準化。ただしEBMは本来の意味で使う。医療費抑制の道具ではない。
研修、研究
1.資格取得のための研修:研修医、専修医、認定医、専門医、学位
2.技術向上のための研修:生涯教育。IT化。ネットワークの有効利用。
研修医制度と専門医制度の整備と、それに見合った給料制度ということにな
る。経済的インセンティブもつけるべきである。
○専門性と一般性のバランス
 専門性と幅の広さのバランスは難しい。
研修の実際
 医学部の卒業生の80%が大学に残る。大病院の症例の多い所だけが研修で
はない。僻地をまわることで、幅の広い研修にはなる。研修医が指導医と、文
字通り寝食をともにするような、できるだけ少人数の教育。また、できるだけ
幅の広い施設を回る。研修は大病院から町立病院までいろんな性格の施設を回
ることが大切ではないか。
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/zyouhoukakusa.html
情報の非対称性を解消するシステムについて

http://www.med.or.jp/nichikara/isei13.html
平成13年度医療政策会議報告書医療と市場経済:
国民が安心できる医療−日本医師会医療政策会議
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